2018 Fiscal Year Research-status Report
網羅的ゲノム比較解析による共生的窒素固定系の起源と進化原理の解明
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17K07509
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 誠志郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (10334301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 元己 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00193524)
岩崎 渉 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50545019)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 適応的分子進化 / 収斂 / 遺伝子機能の起源 / 根粒形成 / 共生窒素固定 / 遺伝子水平伝播 / ectopic gene conversion / 協力 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の協力関係や共生に関わる遺伝子には、その生物の個体としての適応に寄与することで機能が起源し維持されてきた以外にも、その生物の集団や異なる生物との相互作用などのような、異なる階層における適応に関与する働きをもつ場合があると考えられている。そのような、協力に関わる遺伝子群の特徴を抽出し、個体の維持・増殖に関わるハウスキーピング遺伝子群や異なる生物を攻撃する病原性遺伝子群などとの違いを解析することは、現象面から協力関係を研究するだけでは見つからない可能性のある、協力への必要条件の要因(としての遺伝因子)を解明する手がかりとなることが期待できる。本研究ではそのような協力に関わる遺伝子として、根粒形成を伴う共生的窒素固定における植物とバクテリアの相互作用関連遺伝子群に注目し、他の遺伝子にはこれまでみつからなかった分子進化的特徴の解析を試みた。 本研究の結果としてまず、根粒形成遺伝子におけるectopic gene conversion (concerted evolution)が根粒菌のうち特定の系統のみで起きていることを発見した。根粒形成遺伝子の機能を発現するために、根粒菌の系統群それぞれにおいて機能的な収斂や遺伝子水平伝播、genome island形成、そして今回のectopic gene conversionが、平行的に進化していることが明らかとなった。 また本研究では応用研究として、(1)新規協力遺伝子の発見、(2)根粒共生系の起源と進化の解明、(3)植物ーバクテリアの協力関係の促進を促すような遺伝子操作による窒素固定効率の向上を目指している。世界的に研究が進み、爆発的な増殖を続けるゲノムのデータを用い、植物ーバクテリア協力遺伝子群の分子系統解析を行ったところ、上記のうち(2)に関連した発見として、被子植物全体とマメ科植物における根粒共生系の起源を、それぞれ明らかにする手がかりを得た。現在これらの進化現象について論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
集めた情報を一括した根粒形成遺伝子データベースの作成と、新しい系統解析方法のセットアップに時間がかかってしまったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はこれまでに発見した根粒強制遺伝子に関するectopic gene conversionの現象について、全根粒菌のゲノム情報を用いた解析を行い、発表する。また、新たに見つかった、共生系の起源についての特徴をもつバクテリア群の、ゲノムの機能解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究が進んだ結果、根粒菌Azorhizobium属の新規の菌のゲノム情報の解析と、植物育成用のインキュベーター購入をする必要が起きたため。
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Research Products
(4 results)