2021 Fiscal Year Research-status Report
網羅的ゲノム比較解析による共生的窒素固定系の起源と進化原理の解明
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17K07509
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 誠志郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 学術専門職員 (10334301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 元己 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (00193524)
岩崎 渉 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (50545019)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 根粒形成 / 共生窒素固定 / 遺伝子水平伝播 / 協力の進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Azorhizobium caulinodansの新しい株のゲノム解析を行った。根粒菌はProteobacteria門のいくつかの属に多系統群として分布している。Azorhizobium属は他の属にない特徴として、根粒ではなく茎粒をつくること、共生環境だけでなく自由生活環境下でも窒素固定を行うこと、根粒形成遺伝子群の配列多様性が大きいことなどが知られている。一方でAzorhizobium属の解析報告は他の属に比べて少なく、もっとも研究が進んでいる種であるA. caulinodansでさえ、ゲノムの登録はこれまで1株のみであった。そこで本種の新しい株のゲノム配列を解析し、特に根粒菌の共生の進化を知るのに重要な、根粒形成遺伝子群の配列の解析を行った。過去に報告された考えによると、Azorhizobium属の根粒形成遺伝子群がもつ大きな配列多様性は、この属の遺伝子群が祖先的であることが原因とされ、論文における系統解析でもこの属の遺伝子は他全ての根粒菌の姉妹群として位置すると仮定されるのが一般的であった。しかし本研究による配列解析により、この大きな配列多様性は、本属のみに特異的な分子進化加速が起きていることが原因であると示唆された。しかもこの分子進化加速は根粒形成遺伝子群だけに見受けられ、他の機能の遺伝子群には観測されなかった。さらに詳しく系統解析を行ったところ、このAzorhizobium属における根粒形成遺伝子群だけの多様性は、以前考えられていたような「これらの遺伝子群がAzorhizobium属以外から水平移行したこと」が原因なのではなく、「これらの遺伝子群の属内での水平移行を伴いながらの急速な多様化」が原因であることが示唆された。現在本解析の配列を論文として報告する作業を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予想していなかったコロナウィルスによる研究活動への影響のため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の解析でわかった配列を含め、全根粒菌の比較ゲノム解析を進める。種の系統樹と遺伝子系統樹の比較という従来の概念を広げた研究として、根粒形成の系統樹を知るための解析法を開発し、根粒共生系進化を明らかにする。
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