2019 Fiscal Year Research-status Report
日本列島における広域分布草本種の分布変遷過程と花形態分化の進化要因の解明
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17K07532
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
岡崎 純子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (20195332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 浩司 (東浩司) 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50362439)
阿部 晴恵 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, 准教授 (60462272)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 種分化 / 島嶼 / 訪花昆虫 / 海洋島 / 本土近接型離島 / ハプロタイプ |
Outline of Annual Research Achievements |
広域分布種キキョウ科ツリガネニンジン類の大陸から日本列島への侵入過程の変遷とそれに伴う交配様式の分化が花形態変異を起こした要因であるのかを島嶼での訪花昆虫相と交配様式の関連性の視点から解明するため,令和元年度は以下の調査を実施した。(1)系統解析のため,中国からのサンプリングデータと日本の関東地方,近畿地方の離島とその周辺域のハプロタイプ分析を行った。(2)訪花昆虫相と交配様式調査のため伊豆諸島2島(三宅島,伊豆大島),伊豆半島下田市海岸,鳥羽市神島での現地調査を行った。(3)島嶼におけるツリガネニンジン類の形態変異の実態をさらに調べるため,関東の伊豆半島海岸および内陸計2地点を加えた外部形態のサンプリングを行った。その結果,以下の結果が得られた。(1)中国大陸の植物のハプロタイプは日本列島に遺存的にみられる全国タイプと同じであった。また,島嶼では伊豆諸島と関東の本土には同じハプロタイプが分布しており遺伝構造は認められなかった。一方で伊勢志摩ではまだ不十分ではあるが異なるハプロタイプが共存している集団の存在が明らかになった。(2)訪花昆虫相については伊豆諸島の三宅島・伊豆大島ともに本土とは異なり昼間の膜翅目を主として利用していることが明らかになった。ただし関東の本土側集団についてはその訪花昆虫相についての調査が不十分で明瞭な結果が得られていない。一方,鳥羽市神島の集団では夜間の鱗翅目が本土同様主要な訪花昆虫であり,本土との分化は見られないことが判明した。(3)伊豆諸島と本土側の形態変異の解析から,島特有の形質としての形態変異は見られなかったが,三宅島では蜜分泌に関わる形態に有意差が明瞭に見られ,これは訪花昆虫相の違いとの対応が考えられる。一方で,鳥羽市集団ではハプロタイプと対応した花冠花柱比の違いがあるものの訪花昆虫との対応は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度の伊豆諸島での訪花昆虫調査は天候にも恵まれ十分な成果を上げることができたが,関東の本土側の調査は9月上旬に大型の台風15号が関東地方に上陸し,大規模な風水害や土砂崩れ等の大被害をもたらした。そのため本土側の調査地が倒木等の被害が大きく,その後の天候不順も続き調査日程が大幅に遅れ,また例年より現地での開花が早く終了してしまい,訪花昆虫の調査が不十分となりやや遅れてた。また,韓国の共同研究者との都合が合わず,次年度に調査を延期することにしたためこちらの調査が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は以下の実験調査を実施し全体のとりまとめを行う。 (1)日本列島におけるツリガネニンジン類の分布変遷過程の解明: 韓国の研究協力者に韓国でのサンプリングの依頼を行うが,新型コロナ感染症蔓延のため,海外長が出来ない可能性が予想されるため,海外でのサンプリングをもつ日本人研究者の協力を仰いだり,国内の標本庫に保存されているツリガネニンジン類の葉のDNAサンプルの採取を行いそれらからの抽出も試みる。得られたツリガネニンジン類のデータとともにハプロタイプネットワーク解析を行う。これにより日本列島におけるハプロタイプ多型が大陸からの異なるルートによる侵入定着によるのか日本列島においての固有の分化なのかを明らかにする。 (2)島嶼における花形態の分化に及ぼす訪花昆虫相と交配様式については伊豆半島の海岸と関東地方の本土側2地点での調査をおこなう。
これまでの全てのデータを整理し,2島嶼間での形態変異とそれに訪花昆虫相と交配様式が影響を与えているのかの解析結果をまとめるとともにとりまとめについて全員でリモート会議の実施を図り,得られた結果についての議論を行う.
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Causes of Carryover |
海外協力者の韓国の研究者の都合が合わなかったため,韓国でのフィールド調査分が残った。また別の研究助成での研究で薬品等が重なったためその分高額な薬品代も少なくすんだたことによる。本年は全体をまとめるたDNA分析を続けるための薬品代が必要となり,また調査も継続実施するため残額は使用予定である。
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Research Products
(4 results)