2017 Fiscal Year Research-status Report
日本の稲作開始期における水田雑草の誕生プロセス解明についての分子生態遺伝学的研究
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17K07626
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
保田 謙太郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00549032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 祐一郎 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50322368)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | タイヌビエ / 半直立型 / 花粉不稔 / 東北での分布 / 史前帰化植物 / 4倍体 / 地理的変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の水田雑草の多くは、稲作とともに渡来した史前帰化植物に由来すると考えられてきた。しかし、史前帰化植物として典型的なタイヌビエであっても、その一部は日本に自生していた野生種からの水田適応(雑草化)によって誕生した可能性が申請者らの研究によって示された。しかし、その場合、稲作の渡来以前でのタイヌビエの生育場所は謎であった。最近、半直立型の草型を持つタイヌビエが東北地方で発見され、野生種の生き残りのである可能性が推察された。本研究では、半直立型の生態的特性や生育環境を栽培実験や探索調査、分子マーカを用いた地理的変異の解明から、半直立型が稲作渡来以前の日本で生育できたことを示す。さらに、日本のタイヌビエは、史前帰化と日本での雑草化の両方で誕生したとする新説を実証する。 平成29年度の探索調査では、東北地方の青森県、岩手県、秋田県、宮城県の計16ヶ所で半直立型と考えられる個体を新たに見つけた。また、それらの生育場所は、水田畦畔、放棄水田(乾田)、路傍(山際)、ガレ場、放棄畑などであり、水田よりはやや乾いた環境であった。交雑実験では、半直立型と普通型のF1個体を作った。F1個体は順調に出芽し、成長した。また、半直立型と普通型の中間的な特徴を示した。しかし、雄性不稔であることが判明した。比較栽培実験では、半直立型は、畑地、水田、その中間でも問題なく生育した。しかし、半直立型は、普通型に比べて生育の初期から株が開くことが確認された。また、茎は赤くなり、暑い日には十分に灌水されているのにもかかわらず、葉が巻いた。やや遮光されるような環境を好んでいるように考えられる結果が得られた。さらに、分子マーカによって半直立型と普通型が識別できること、フローサイトメトリーによって半直立型が4倍体であると判別できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した実験や調査がすべて実施できた。半直立型の東北地方での分布や生育環境が明らかにできた。半直立型と普通型のF1が得られ、それが雄性不稔であることが判明し、予期せぬ成果も得られた。また、分子マーカやフローサイトメトリーで半直立型を識別する方法が確立された。本研究の目的を達成する上で重要な成果が得られたため、順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
栽培実験や探索調査、地理的変異の分析を継続し、半直立型のタイヌビエの実態の解明、さらには半直立型が稲作渡来以前の日本で生育できたこと、日本のタイヌビエは、史前帰化と日本での雑草化の両方で誕生したとする新説の実証を進める。半直立型と普通型ではF1は不稔になったが、他の組み合わせを試す。得られた成果を論文としてまとめ、成果の公表に務める。
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Causes of Carryover |
他の研究費などで旅費の一部が賄え、また、学会の開催が、3月ではなく4月であったため、次年度使用額が生じた。次年度は、物品費、旅費とその他費でおもに使用する。
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