2018 Fiscal Year Research-status Report
日本の稲作開始期における水田雑草の誕生プロセス解明についての分子生態遺伝学的研究
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17K07626
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
保田 謙太郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00549032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 祐一郎 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (50322368)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | タイヌビエ / 半直立型 / 交雑不稔 / 東日本での分布 / 史前帰化植物 / 四倍体 / 地理的変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の水田雑草の多くは、稲作とともに渡来した史前帰化植物に由来すると考えられてきた。しかし、史前帰化植物として典型的なタイヌビエであっても、その一部は日本に自生していた野生種からの水田適応(雑草化)によって誕生した可能性が申請者らの研究によって示されたが、稲作の渡来以前でのタイヌビエの生育場所は謎であった。最近、半直立型の草型を持つタイヌビエが東北地方で発見され、野生種の生き残りのである可能性が推察された。本研究では、半直立型の生態的特性や生育環境を栽培実験や探索調査、分子マーカを用いた地理的変異の解明から、半直立型が稲作渡来以前の日本で生育できたことを示す。さらに、日本のタイヌビエは、史前帰化と日本での雑草化の両方で誕生したとする新説を実証する。 本年度は、半直立型を北海道、東北地方南部、新潟県で収集し、それらの染色体数や草型を確認し、半直立型が東日本の広域に分布していることを明らかにした。また、それらの生育環境は水田、水田畦畔、放棄水田(乾田)、路傍(山際)、ガレ場、放棄畑であることも把握した。交雑実験では、新たな組み合わせで半直立型とタイヌビエとの雑種を作った。現在、F1個体の分析を進めている。DNAマーカによる分析では、半直立型とタイヌビエを比較し、半直立型内にも変異があることを確認した。フローサイトメトリーによるDNA量の比較では、半直立型とタイヌビエとでやや異なっていることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した実験や調査がすべて実施できた。半直立型の東日本での分布や生育環境が明らかにできた。交雑試験では半直立型と普通型のF1が得られ、それが不稔であることが判明した。また、DNA量でももやや異なっていることが示され、予期せぬ成果も得られた。分子マーカやフローサイトメトリーで他のヒエ属植物から半直立型を識別する方法が確立できた。本研究の目的を達成する上で重要な成果が得られたため、順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
栽培実験や西日本での探索調査、地理的変異の分析を継続し、半直立型のタイヌビエの実態の解明、さらには半直立型が稲作渡来以前の日本で生育できたこと、日本のタイヌビエは、史前帰化と日本での雑草化の両方で誕生したとする新説の実証を進める。半直立型と普通型ではF1は不稔になったが、他の組み合わせを試す。得られた成果を論文としてまとめ、成果の公表に務める。
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Causes of Carryover |
他の研究費などで旅費の一部が賄え、節約できた。USAからの遺伝資源の送付が、政府機関閉鎖の影響で遅れたため、平成31年度に分析が繰り越された系統が生じた。それらの理由によって、次年度使用額が生じた。次年度は、繰り越された系統の分析を急ぎ、物品費、旅費とその他費を使用する。
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