2022 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular ecogenetic study on the invasion process of weeds into paddy fields at the beginning of rice cultivation in Japan
Project/Area Number |
17K07626
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
保田 謙太郎 秋田県立大学, アグリイノベーション教育研究センター, 准教授 (00549032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 祐一郎 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 教授 (50322368)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | タイヌビエ / 半直立型 / 交雑不稔 / 東日本での分布 / 史前帰化植物 / 四倍体 / 地理的変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の水田雑草の多くは、稲作とともに渡来した史前帰化植物に由来すると考えられてきた。しかし、史前帰化植物として典型的なタイヌビエであっても、その一部は日本に自生していた野生種からの水田適応(雑草化)によって誕生した可能性が申請者らの地理的変異の分析によって示されたが、稲作の渡来以前でのタイヌビエの生育場所は謎であった。最近、半直立型の草型を持つタイヌビエが東北地方で発見され、野生種の生き残りのである可能性が考えられた。本研究では、半直立型の生態的特性や生育環境を栽培実験や探索調査から明らかにし、半直立型が稲作渡来以前の日本で生育できたことを示す。さらに、分子マーカを用いた変異解析から、日本のタイヌビエは史前帰化と日本での雑草化の両方で誕生したとする考え方について検証する。半直立型は、北海道~長野県まで分布し、路傍や畦畔、空き地、ガレ場などの二次遷移の初期段階となる攪乱環境に生育していた。生育環境の特徴からは、半直立型は、稲作渡来以前の日本にも十分に存在できたと推察される結果を得た。一方で、分子マーカ等を用いた変異解析からは、半直立型は、タイヌビエと同じAABBゲノムを持ち、遺伝的に極めて近い関係にあるが、両者間の交雑実験では花粉稔性が著しく低下し、また、稔実種子を付ける組み合わせでも、種子数は1穂あたり、1粒程度であった。さらに、フローサイトメトリーを用いたゲノム量の比較では、半直立型のゲノム量がタイヌビエと比べて少ない傾向にあり、核waxy遺伝子のシークエンス分析やMIG-seq分析でも両者間の遺伝的分化は認められた。これらの解析からは、タイヌビエが半直立型の水田適応によって誕生したことを支持する結果を得られなかったが、半直立型は日本ではこれまで認識されてこなかったヒエ属植物であり、タイヌビエの亜種もしくは最近縁種となる関係であることが明らかになった。
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