2017 Fiscal Year Research-status Report
植物病原菌類の病原性発現におけるホメオボックス転写因子の役割および進化
Project/Area Number |
17K07669
|
Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
鈴木 一実 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (90390880)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉津 弘佑 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (20579263)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 病原性発現 / 付着器の形態分化 / ホメオボックス転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホメオボックス遺伝子は,ショウジョウバエにおいて触角や足などの大規模な形態形成に関与することが知られている,遺伝子発現の重要な制御因子である。植物病原菌におけるホメオボックス遺伝子の機能解析に関する研究例は少なく,病原性発現における役割あるいは各ホメオボックス遺伝子の機能分化については不明な点が多い。 ウリ類炭疽病菌のゲノム情報を解析したところ,本菌は10個のホメオボックス遺伝子を有することが明らかとなった。これらの10個のホメオボックス遺伝子のうち,8個のホメオボックス遺伝子では遺伝子破壊株の作出と表現型の解析により,機能が推定できた。すなわち,CoHox1およびCoHox3遺伝子についてはそれぞれの遺伝子破壊株の表現型の解析を行ったところ,CoHox1遺伝子は侵入菌糸の形態分化に,CoHox3遺伝子は付着器の形態分化に関与していることが明らかとなった。また,CoHox10遺伝子はすでに先行研究で付着器貫入に関与していることが報告されているCST1(Ste12)遺伝子であることが判明した。さらに,CoHox2遺伝子およびCoHox4遺伝子破壊株を作出し表現型を解析したところ,CoHox2遺伝子は分生胞子形成および剛毛形成に,CoHox4遺伝子は栄養菌糸生育,分生胞子の形態および付着器の形成に関与することが明らかとなった。一方,CoHox6遺伝子,CoHox7遺伝子およびCoHox9遺伝子破壊株では野生株と比較して表現型に差異は認められなかった。 これらのことから,ウリ類炭疽病菌が有する10個のホメオボックス遺伝子のうち,少なくとも5種類の解析した遺伝子はそれぞれ感染過程で異なる機能を有していること,いずれも病原性関連遺伝子として本菌の病原性発現に重要な役割を果たしていることが明らかとされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はおおむね順調に進展していることから,平成30年度は当初の計画を進める予定である。また,研究成果の一部(CoHox3遺伝子の機能解析)を学術誌に投稿し,受理された。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究成果を学術誌にすみやかに投稿し,論文化する予定である。現在,CoHox1遺伝子およびCoHox4の機能解析について投稿準備中である。また,トウモロコシごま葉枯病菌の保有しているホメオボックス遺伝子の機能解析についてもすでに遺伝子破壊株の作出と表現型の解析はすべて終了したので,その成果もとりまとめたい。 まだ機能が未解明のウリ類炭疽病菌の2個のホメオボックス遺伝子についても,現在遺伝子破壊ベクターの構築と遺伝子破壊株の作出を実施中であり,早急に機能解析を実施したい。また,野生株と比較して感染過程における表現型に差異が認められない3種類のホメオボックス遺伝子破壊株については今後ストレス耐性もあわせて検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由) 平成29年度の購入を計画していたサーマルサイクラーの購入は型式の設定に手間取り,平成30年度の購入とする。 (使用計画) サーマルサイクラーの購入は平成30年度の購入とする。
|
Research Products
(3 results)