2017 Fiscal Year Research-status Report
マルトトリオシル配糖体合成酵素における糖転移反応の分子基盤と応用展開
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17K07727
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
炭谷 順一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (10264813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 重徳 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (90244665)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アミラーゼ / マルトトリオース生成アミラーゼ / 糖転移反応 / 配糖体 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルカリ条件下でG3Amy WTのX線結晶構造解析を行った。pH 8.2の沈殿剤に浸漬した5つの立体構造から,+側Subsiteを構成する Loop F258-G260のB-factorが増大していることがわかった。またこのLoopは酸/塩基触媒E256と隣接しており,アルカリ条件下ではE256の向きがわずかに変化していた。E256は糖転移反応が起こる際のAcceptorへの求核攻撃を担っているためLoop F258-G260に引っ張られることによるわずかな向きの変化が糖転移活性に関与している可能性が考えられた。 変異酵素L191Rの糖転移活性上昇のメカニズムを解明するために,L191RとL191R/D225A(D225:求核触媒)の様々な状態のX線結晶構造解析を行った。L191R-apo,L191R-G3複合体の解析から,R191側鎖は活性部位方向へ柔軟に動くことが可能であり,AcceptorがSubsite -1付近に導入されるのを補助している可能性が考えられた。L191R/D225A-G3-G4 complexの解析からは,R191側鎖がSubsite -2に位置するGlc残基とSubsite +1,+2に位置するGlc残基と同時に相互作用していることがわかった。またL191R/D225A-G6複合体の解析から,R191側鎖の位置は特定できなかったがLoop F258-G260がG6を認識し後退している様子を確認した。 これらの結果から,Loop F258-G260の柔軟性を向上させる変異を導入することで,さらに糖転移活性が上昇した変異酵素作製の可能性が考えられた。また加水分解反応におけるWTとL191RのKinetic解析から,L191Rの触媒効率はWTの2倍であることがわかり,L191Rが示す糖転移活性の高さは加水分解活性の低下による影響ではないことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究計画で予定していた(1)G3Amy-L191R変異酵素における糖転移活性上昇機構の解明と,(2)加水分解活性および糖転移活性のpH依存性の解明について検討を加えた。 アルカリ条件下でG3Amy WTのX線結晶解析を行うことで,アルカリ条件下ではLoop F258-G260の揺らぎが大きくなり,その結果として酸/塩基触媒E256の側鎖の向きが変化し,そのことが糖転移活性に関与している可能性が考えられ,アルカリ条件下で糖転移活性が上昇する原因の一端を明らかにすることができた。 また,L191RおよびL191R/D225Aの様々な状態のX線結晶解析を行うことで,R191側鎖がSubsite -2に位置するGlc残基とSubsite +1,+2に位置するGlc残基と同時に相互作用していること,Loop F258-G260が基質結合に伴って柔軟に動いていることがわかり,これらがL191Rの糖転移活性上昇の原因であることを突きとめた。 以上のように,今年度の研究で,G3Amyの糖転移活性について求めていた知見を得ることができ,予定していた実験項目をほぼ予定通りに進行することができていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた結果から,Loop F258-G260がさらにflexibleになるような変異を導入することで,糖転移活性が上昇する可能性が考えられたことから,このLoop自身,あるいはこのLoopと相互作用している領域にアミノ酸置換を導入する予定である。このLoopが研究目的にも挙げていた,「G3Amy における加水分解反応/糖転移反応を運命づけるスイッチング機構の解明」にもつながるものと考えている。 また,論文としてまとめるために,G3Amy WTおよびL191R変異酵素の糖転移活性のKinetic解析を行う予定である。L191Rの糖転移活性上昇について,定量的に議論するための不可欠なデータとなるものと考えている。 さらに,研究計画にも挙げている,(3)アグリコン特異的転移活性上昇変異酵素の取得についても検討を加える予定である。
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Causes of Carryover |
差額が生じた理由は物品費をあまり使わなかったことによる。これは既に保持している試薬等で今年度の実験が賄えたことによるものである。次年度は,合成した配糖体の解析と各種変異酵素精製および反応産物分析のために多量の研究試薬および精製用カラム等が必要となり,それらに使用していきたいと考えている。
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