2018 Fiscal Year Research-status Report
内湾域の底棲魚介類の初期減耗に餌料環境が及ぼす影響の解明
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17K07893
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
児玉 圭太 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (90391101)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生活史初期 / 食性 / ペプチド核酸 / 次世代シーケンス / 東京湾 / 甲殻類 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京湾で稚シャコを採集し、目視により消化管内容物の存在が認められた稚シャコ6検体についてPNAプローブを用いた食性解析を行った。幅広い生物分類群の18S rDNAおよび28S rDNAを増幅するユニバーサルプライマー、およびホスト生物(シャコ)のDNA増幅を特異的に阻害するためのPNAプローブを用いてPCRを行った。増幅産物を用いてMiSeqによる次世代シーケンス解析を行った。PNAプローブ添加により、18S rDNAにおいては増幅産物からシャコ類のDNAは検出されなかった。一方、28S rDNAにおいては増幅産物からシャコ類のDNAが検出されたが、組成比は0.4%と非常に低かった。以上より、18S rDNA、28S rDNAともにPNAプローブによりシャコ類DNAの増幅阻害が可能であることが確認された。次に、18S rDNAの増幅産物の分類群組成を調査した結果、後生動物、渦鞭毛藻類、珪藻類の3分類群で組成比の96%を占めた。後生動物については更に下位の分類群について組成比の内訳を調べたところ、多毛類が最も高く、次いで魚類、甲殻類であり、この3分類群で後生動物の組成比の99%を占めた。一方、28S rDNAの増幅産物の分類群組成をみると、18S rDNAと同様に後生動物、渦鞭毛藻類および珪藻が優占し、これらの3分類群で組成比の91%を占めた。後生動物については更に下位の分類群について組成比の内訳を調べたところ、18S rDNAと同様に多毛類が69.8%で最も優占し、次に甲殻類が20.6%の組成比を示した。一方、18S rDNAで優占した魚類は28S rDNAでは検出されず、逆に18S rDNAで検出されなかった軟体類が28S rDNAにおいて8.3%の組成比で検出された。以上の結果より、稚シャコの消化管内容物においては多毛類と甲殻類が主要構成物であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
18S rDNAと28S rDNAにおいて増幅産物に差異が認められた要因については、今後検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
野外調査により同日・同地点において稚シャコおよびマクロベントスを採集し、稚シャコ消化管内容物の解析結果およびマクロベントス生物相との関連について詳細に検討する。具体的には、マクロベントスの種別の18S rDNAの塩基配列を解析し、Webデータベースに登録し、シャコ消化管内容物から検出された塩基配列情報との相同性について解析を行う。
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Causes of Carryover |
平成30年度の本交付金により予定していたフィールド調査のための傭船費を別予算から支出した。また、遺伝子解析のための試薬は前年度のものを活用した。このため未使用額が発生した。平成31年度は解析データの精度を向上させるため検体数を増やし、そのための次世代シーケンス解析費用として予算を使用する。
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