2018 Fiscal Year Research-status Report
農外労働供給が食料供給と栄養摂取に及ぼす効果:ベトナム農村世帯に関する実証分析
Project/Area Number |
17K07964
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
園田 正 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (60329844)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VU THIBICHLIEN 名古屋経済大学, 経済学部, 准教授 (60747880)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 家計生活水準調査 / 出稼ぎ / 食料支出 / 栄養摂取 / ベトナム / 農家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,1990年代から最新年までのベトナム農家のミクロ(パネル)データに基づき,農外労働供給(賃金労働・非農業自営業・出稼ぎ),食料供給,栄養摂取に関する理論・実証分析の方法を改善しながら,農家の農外労働供給行動,それが食料供給と栄養摂取に与える効果,食料供給と栄養摂取の相互依存関係を考察する。また,市場の発展が進むベトナムにおいて,貧しい農家が所得と栄養状態を十分改善できない原因をさぐり,その改善に必要な政策を見出すことを目的とする。本年度は,農家行動に関する幅広い情報を長い期間にわたって整理するため, 1992~2014年のベトナム家計生活水準調査から農家の世帯員属性と就業,農業における投入・産出量,食料消費,所得などに関するデータの整理を行った。この作業と並行して,2010年と2014年のベトナム家計生活水準調査に基づいて海外研究者との共同研究を進め,短期的な出稼ぎが,農家の一人当たり食料支出(総支出と9費目への支出),一人当たりカロリー摂取量,食料支出とカロリー摂取に関する多様化指数に与える影響を分析した。分析結果によれば,出稼ぎ者のいる農家は,主に外食への支出のために一人当たり食料総支出が少なく,主に穀物消費のために一人当たりカロリー摂取量が多く,カロリー摂取に関する多様化指数が低い。また,食料支出とカロリー摂取量を自給・購入別にみると,出稼ぎ者のいる世帯は,自給による消費が多く,購入による消費が少ない。したがって,近年のベトナムでは,短期的な出稼ぎは必ずしも農家の食生活を改善しているわけではない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データ整理においては,比較的長い期間にわたり共通の変数を定義する作業が難航した。また,理論分析と実証法の提案では,非農業自営業を農家モデルに組み込んだ上で,自営業への就業が農業産出に与える影響の分析について,理論的帰結がやや曖昧な結果となっている。一方で,海外研究者との共同研究により,非農業部門への就業(出稼ぎ)が食料支出や栄養摂取に及ぼす効果に関する実証結果が得られ,論文化できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
分析用データセットを整えながら,計画を達成するため,農外労働供給,食料生産,栄養摂取の相互関係について,できるかぎりの理論分析,実証分析を行う。具体的には,非農業自営業の生産活動を含む農家モデルの理論分析,二種類の農外就業(賃金雇用と非農業自営業への就業)の実証分析,これらの農外就業が生産物供給と栄養摂取に与える効果の推定などを行い,その政策的意義を見出す。
|
Causes of Carryover |
研究計画にやや遅れが生じ,米国での研究報告・打合せが延期となったため。
|
Research Products
(3 results)