2017 Fiscal Year Research-status Report
環境制御によるチャボイナモリの栽培化とカンプトテシンの効率生産
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17K08018
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
彦坂 晶子 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (50345188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石神 靖弘 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 助教 (50361415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カンプトテシン / 成長速度 / 光合成速度 / 明期 / 花芽分化 / 湿度 / 光強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 光合成に関する基本特性の把握 園芸作物ではないチャボイナモリでは、光合成に関する基本特性が明らかでない。野生のチャボイナモリは南西諸島などの山地の常緑樹林内の林床に自生することから、トマトやレタスなどと比較して、やや高温・高湿度、低光強度の条件に適応した光合成特性を示すと考えられる。そこで、まず、光合成蒸散測定装置を用いて、チャボイナモリの光-光合成曲線、温度-光合成曲線、CO2-光合成曲線のグラフを作成し、栽培に適したおよその光環境条件を探索した。その結果、チャボイナモリはレタスなどよりもさらに低い光強度でかつ、高気温、高湿度条件が成長速度を速めるのに必要であることが明らかになった。
2 低光強度下で日積算受光量を高める方法 チャボイナモリは林床に自生することから、高い光強度下では生育阻害が生じる可能性が高い。また、光合成速度測定の結果から、低い光強度下での栽培が適することが明らかになった。そこで低光強度下で一定期間あたりの光合成産物の蓄積を高めるため、どの程度明期を延長できるか、人工環境下で栽培試験を実施した。その結果、明期を長くするほど、成長速度は早くなり、明期24時間でも生理障害はみられなかった。しかし、明期12時間以上では、花芽が多数着生することが明らかになった。花芽はカンプトテシンを高濃度に蓄積するものの、花芽の重量は葉に比べ小さく、葉の分化が抑制される。よって、今後はカンプトテシンを葉、茎、花蕾、根のどの器官で生産するのかにより、明期を調節する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に予定していた光合成に関する基本特性の把握と、低光強度下で日積算受光量を高める方法、については概ね予定通りに完了した。今後、さらに光質条件を変えた場合での光合成速度ならびに目的成分濃度の測定を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降も研究計画に従い、光合成産物の転流と分配の制御と、環境ストレス処理を実施する。 具体的には、地上部の葉が十分に成長した場合、一般に地下部の根の成長も大となると思われる。しかし、仮に地下部の成長が十分でない場合には、地上部と地下部の温度制御により、根への転流・分配割合を高める環境条件を探索する。チャボイナモリは葉菜類などに比較して、2-3℃高い温度環境下での成長速度が速いと予想される。そこで本試験では、前述の光合成の基本特性を基に、人工気象室内の気温を数段階設定し、地上部および地下部の乾物分配率を調査する。次いで、培養液の温度をヒーター/チラーを用いて変化させ、地上部の光合成産物を地下部へ転流・分配する環境条件を明らかにする。
地上部および地下部への環境ストレスを利用して、葉および根に含まれるカンプトテシン(CPT)収量を最大にするための環境条件を探索する。具体的には、これまで申請者らが行った機能性野菜や薬用植物を対象とした研究事例では、地上部への紫外線(UV)照射によって地上部だけでなく地下部の目的成分濃度が増加した。また、その効果は波長と照射期間によって異なった。これらの知見を踏まえ、本研究でも、チャボイナモリ地上部へのUV照射を行い、地上部および地下部のCPT濃度への影響を明らかにする。また、生育を抑制しない範囲でCPTが高濃度になる処理条件を見いだすため、UV波長および照射期間を検討し、効率生産に適した処理条件を提案する。
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Causes of Carryover |
年度末に購入した物品が見積価格よりも低価格で納品されたため。
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