2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K08032
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
境 健太郎 宮崎大学, 産学・地域連携センター, 准教授 (20336291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 太一 宮崎大学, 産学・地域連携センター, 准教授 (40541355)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光励起蛍光分光法 / 農薬 / 非破壊計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、残留農薬に焦点をあて、代表者がこれまで蓄積した「半導体物性評価」の知見に基づく「光励起蛍光分光法」を発展的に展開して、簡易・迅速かつ高精度に計測できる非破壊計測技術の基礎的知見を得ることを目的としている。 平成29年度計画は、課題1「農薬の蛍光分光スペクトル形状の把握」として、農薬試料を、半導体デバイスに用いられるシリコンウェハ基板上に噴霧し乾燥させたものを準備し、評価項目Ⅰ:蛍光の有無、および評価項目Ⅱ:高分解能蛍光スペクトルを取得する。また課題2「蛍光による農薬量の検出限界」として、農産物に付着した微量の農薬を検出するために、本評価方法による微量農薬の検出限界を把握する(評価項目Ⅲ)こととした。 計測方法として、光励起蛍光分光測定装置は農薬の蛍光測定のため、紫外励起による可視・赤外蛍光が測定できるものを用いた。励起レーザーは波長325nmのHe-Cdレーザーを使用し、レンズにより集光し試料に照射した。高分解能蛍光スペクトルを取得するために、適度に明るい焦点距離50cmの分光器を使用した。検出器は光電子増倍管を用いた。農薬には、基礎的知見収集のため、ダコニール1000、モスピラン水溶液、トレボン、スミチオン等、また展着剤のダインを用いた。 本研究で用いた農薬の内、ダコニール1000、モスピラン水溶液、トレボン、ダインで蛍光があり、かつそれらのスペクトルを取得することができた。特にダコニール1000及びモスピランは比較的強い蛍光を、またダイン及びトレボンは弱い蛍光を示し、蛍光する波長は農薬ごとに異なることがわかった。比較的強い蛍光を示すダニコール1000、モスピラン水溶液を水で希釈し、本測定システムでの農薬の検出限界を調査中である。また今後農薬に含まれる成分を農薬ごとに整理し、蛍光ピークの同定を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画では、農薬試料を、半導体デバイスに用いられるシリコン(Si)ウェハ基板上に噴霧し乾燥させたものを準備し蛍光測定を行う予定であった。しかしウェハ上で農薬が乾燥するものとしないものが存在したため、平成29年度は対応策として農薬を原液のまま計測する手法に切り替えた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の課題2「蛍光による農薬量の検出限界」の調査については、現有の計測システムに改良を加えることとしている。具体的にはファイバー式の蛍光分光計測システムに液体セル用試料ホルダーを追加し、さらにHe-Cdレーザーを入射できるように改良し、計測および解析を進める。また課題1「農薬の蛍光分光スペクトル形状の把握」に関連して、農薬の劣化試験を行う。具体的には農薬を大気圧下で2週間程度放置し、1日ごとの蛍光分光スペクトルの取得を行い、スペクトルの変化、すなわち農薬成分の変化が起こらないかを確認する。 また新たに、課題3「高分解能蛍光分光による農薬種の特定」として、実際の農産物表面に意図的に農薬を噴霧した試料を準備し、その蛍光測定を実施する。本測定では、農産物そのものからの蛍光(バックグラウンドノイズ)も観測される。そのような実環境下において農薬種の特定が可能かどうかを明らかにする。加えて、照射レーザー強度によっては農産物の表面を傷める可能性が考えられる。よって、前述のように農薬検出装置の要求性能を算出する上で重要な知見が得られる(評価項目Ⅳ)。
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