2017 Fiscal Year Research-status Report
牛呼吸器病症候群における複数病原体感染による重症化機序の解明
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17K08080
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
岡林 環樹 宮崎大学, 農学部, 准教授 (10359995)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 牛呼吸器症候群 / 混合感染 / 牛RSウイルス / Pasteurella multocida |
Outline of Annual Research Achievements |
牛呼吸器症候群(BRDC)の実態を明らかにするために、牛呼吸器スワブにおけるBRDC関連病原体遺伝子の検出を試みた。さらに呼吸器上皮細胞を用いたウイルスと細菌の複合感染モデルを作成し、ウイルス感染が及ぼす細菌付着性への影響を調べた。 牛呼吸器スワブ101検体においてRT-PCR/PCRにより牛RSウイルス(BRSV)、牛ウイルス性下痢ウイルス、牛パラインフルエンザ3型、牛ヘルペスウイルス1型、Pasteurella multocida、Mannheimia haemolytica、Histophilus somni、Mycoplasma bovisの遺伝子検出を行った。また、ヒト呼吸器上皮細胞A5492にウイルスを感染させた後、細菌を処理し、細胞表面の細菌付着性を評価した。 BRDC病原体遺伝子陽性率は81% であり、陽性検体中の57%から2種以上の病原体遺伝子が検出できた。2種類以上の病原体遺伝子が検出された検体において、ウイルスと細菌の組み合わせが49%を占めた。これらのウイルスと細菌の複合検出検体の組み合わせとしては、BRSVとP. multocidaの組み合わせが多くみられた。しかしながら、病原体の分離は成功しなかった。BRSV先行感染した呼吸器上皮細胞においてP. multocida付着性を調べたところ、BRSVの感染により、P. multocidaの細胞付着率が有意に増加した(p<0.005)。 ウイルスと細菌の複合検出率が高く、BRDCには単独ではなく複数の病原体が関与し、ウイルスと細菌による複合感染が高頻度で起きていた。呼吸器上皮細胞へのBRSVの先行感染が、P. multocidaの付着を増強していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、H29年度に、牛呼吸器症候群に関連する病原体の汚染状況を、新規複合診断方法うにより明らかにする予定であった。食肉衛生検査所、農場、大学附属農場における検体採集が順調に進み、その調査が予定より早く進行した。 本来なら本研究で開発すべき牛呼吸器症候群に対する複合診断方法が、他研究機関より牛呼吸器症候群に対する複合診断開発が行われてしまったために(Kishimoto et al., JVMS, 2018)、我々は、コンベンショナルPCRを用いた解析を行った。この開発時間を利用して、H30年度に予定していたウイルスの先行感染による細菌の上皮細胞付着性への影響を調べることに着手できた。その結果よりBRSVの先行感染が、パスツレラ菌の上位細胞付着性を増強し、同時に炎症性サイトカイン誘導性を活性化することがわかり、ウイルスと細菌の複合感染が重症化に関連している可能性を指摘することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
宮崎県食肉検査処理場から健康牛肺を入手し、BRDC関連病原体が検出されないことを確認する。細胞剥離酵素添加PBSにて気管および肺胞内を洗浄、灌流させ、気管上皮、肺胞上皮細胞の初代培養系を作製する。初代培養が確立できない場合には、ヒト肺胞上皮細胞系列、牛呼吸器細胞系列も使用することを視野にいれる。これらの呼吸器系細胞に、BRDCに関連するウイルスを感染させ、その後細菌を接種し、ウイルスの感染がおよぼす細菌付着性を評価し、細胞障害性をサイトカインELISA/mRNA測定、細胞生存性により評価する。細菌の付着亢進が確認できた場合には、細胞側の細菌接着因子(ICAM-1、PAF受容体など Yokota et al., Mediators Inflam., 2012;岡林共著)のタンパク質発現レベルをウエスタンブロット、FACSにて、mRNA活性をRT-PCRにて評価し、ウイルス感染による細菌接着因子発現の影響を明らかにする。これらの複合感染モデルに、接着因子に対する抗体を処理することによる細菌付着性の低下により、対象とした接着因子が細菌付着に関与していることを確認する。既知の細菌性接着因子の増減が確認できない場合は、マイクロアレイを用いて、ウイルス感染により誘導される特異的遺伝子を網羅的に検索することも考える。
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Research Products
(3 results)