2018 Fiscal Year Research-status Report
カニクイザル一倍体ES細胞の樹立と個体作出に関する基盤的研究
Project/Area Number |
17K08146
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
下澤 律浩 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 主任研究員 (50300786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 一朗 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 再雇用職員 (90171470)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 一倍体 / ES細胞 / 顕微操作 / カニクイザル / 遺伝子改変 |
Outline of Annual Research Achievements |
一倍体ES細胞は遺伝子改変動物の作出に貢献できると考えられることから、当センターで維持されているカニクイザルを使用し、その樹立に関して検討した。FSHおよびhCG、そして内在性ホルモン抑制剤の投与により卵胞発育の誘導後、卵を採取した。ヒアルロニダーゼ処理で卵丘細胞の除去後、極体を持つ成熟卵およびM I期卵からの成熟卵を実験に供試した。今期は雌性ゲノムのみを持つ一倍体卵の作出を次の方法で作製した。成熟卵を2 uMイオノマイシンに5分浸漬、続けて10 ug/mlサイクロヘキシマイドに5-6時間浸漬することで人為的な活性化を誘導し、1前核2極体の形態を示す卵を一倍体卵とした。体外培養後、2個の胚盤胞への発生を確認した。これら胚盤胞は顕微授精後に雄性前核を除去することで作製した一倍体卵の貧弱な胚盤胞と異なり、通常の受精卵に似た形態に良好であることが観察された。ES細胞の樹立のために、これら胚盤胞から内部細胞塊部位(ICM)を注射針を使用して物理的に摘出し、受精卵由来ES細胞の樹立および培養と同様に20%KSRおよびFGF加Knockout DMEMを使用してマウス胎児繊維芽細胞上に播種した。その結果、1個の胚盤胞由来ICMから十分に進展した細胞塊が得られ、その継代後に受精卵由来のES細胞に似た形態を持つES様細胞を得ることに成功した。このES様細胞において、未分化マーカーであるOct-3、SSEA4およびTRA-2-54のタンパク質発現が免疫蛍光染色によって確認された。受精卵から作出した一倍体卵よりも活性化刺激により作出した一倍体卵で、質の良い胚盤胞の発生が確認でき、さらにそれから1個のES様細胞が樹立されたことは、雌性ゲノムのみを持つ一倍体卵の発生およびES細胞の樹立に関する精子の関与は低く、人為的な活性化処理が適していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一倍体雌核発生胚に由来するES様細胞の樹立に成功したものの、その安定した培養に手間取ったことなどがあり、十分な解析を進めることができなかった。また、一倍体卵の作製方法は確立できたものの、その発生が当初の予想に反して低率であることから、複数の一倍体ES細胞の樹立に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
一倍体雌核発生胚由来のES細胞は、人為的な活性化誘起を利用した胚盤胞の作出、およびそれからのES細胞樹立数を増やし、その性状解析を行う。さらに、雄核発生胚由来のES細胞の樹立についても実施する。昨年度までに確認された一倍体卵の胚盤胞への低い発生率を改善するために、培養中の一倍体胚への人為的な活性化処理を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
他研究者からの譲渡により、消耗品への支出が不要となったものがあったため、次年度使用額が生じてしまった。次年度では、消耗品の購入に使用する。
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Research Products
(5 results)