2017 Fiscal Year Research-status Report
イメージングMSによる生体内スフィンゴ脂質の組織分布立体的可視化手法の開発
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17K08233
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三枝 大輔 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 講師 (90545237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
可野 邦行 東北大学, 薬学研究科, 助教 (50636404)
元池 育子 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 准教授 (70347178)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スフィンゴ脂質 / DIUTHAME / DESI / IMS / スフィンゴシン一リン酸 / イオンモビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、主にIMSによるスフィンゴ脂質の検出感度向上、安定した連続組織切片の作成、IMSによる定量法の開発に関する研究を実施した。IMSによるスフィンゴ脂質測定は、Desorption Ionization Using Through Hole Alumina Membrane (DIUTHAME) を用いることにより、一部のスフィンゴ脂質については、組織切片上での誘導体化技術を用いるよりも良好な結果が得られる可能性を見出した。一方で、平成30年度以降に分子機能の解明に着手する予定であるスフィンゴシン一リン酸 (S1P) の検出には未だ課題が残されており、平成30年度以降に、脱離エレクトロスプレーイオン化 (Desorption Electrospray Ionization, DESI)、イオンモビリティ搭載型MS とDIUTHAMEを組み合わせることで、測定法を根本的に改善し、新たな技術によるスフィンゴ脂質の検出感度向上を目指す。 また、マウス組織の連続切片の作成は、川本フィルムを用いることにより、極めて安定した連続組織切片の作成ができたことに加え、導電性を有する新型川本フイルムの開発に成功したことから、スフィンゴ脂質検出のみならず、現在までの 多くのIMS技術による組織切片に含まれる分子の検出感度向上に大きく貢献できることが判明した。現在、新型川本フイルムについては論文を作成中であり、平成30年度内に新規技術として発表する予定である。今後は、連続組織切片画像を用いる立体的可視化技術と、IMSによるスフィンゴ脂質の定量技術の開発に着手する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の課題1「IMS を用いるスフィンゴ脂質測定の検出感度向上」については、2, 4-ジフェニルピラニリウム-テトラフルオロホウ酸 (DPP-TFB) によるスフィンゴ脂質の検出感度向上を試みたが、誘導体化効率が低く、スフィンゴシン一リン酸の検出ができなかった。従って実験方針を変更し、Desorption Ionization Using Through Hole Alumina Membrane (DIUTHAME、浜松ホトニクスとの共同研究) によるIMS測定を実施した。その結果、一部のスフィンゴ脂質の検出に成功し、バックグラウンドノイズの低下 (検出感度の向上) に成功した。次に、課題2「マウス組織の全連続切片の作成」については、川本フィルムを用いることにより、安定した連続切片の作成に成功した。また、導電性を有する新型フィルムの開発に成功し、分子によって通常のフィルムを用いたIMS分析と比較し、1.5~10倍程度の検出感度の向上に成功した。また、課題3「IMS を用いるスフィンゴ脂質定量法の開発」については、肝臓組織切片による定量用組織作成方法の開発には成功したが、スフィンゴ脂質のIMS測定は、課題1で最適化された条件を用いるため、着手が遅れている。以上の結果から、課題1及び3については、スフィンゴシン一リン酸の検出に未だ課題が残されており、更なる測定条件の検証が必要であることから、研究計画が遅れている。一方、課題2については、連続切片の作成と導電性フィルムの開発まで成功しており、極めて順調である。従って、予定よりもやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
スフィンゴ脂質の検出感度向上に、MALDIを用いる場合はマトリックス試薬の選択が極めて重要であるが、現在までに最適化に成功していない。我々は、浜松ホトニクスとの共同研究において、DIUTHAMEを使用し、バックグラウンドノイズの低下に成功したが、LDIを用いていることから、大幅な検出感度の向上は観察されなかった。従って、平成30年度は、IMSに用いるイオン化法を変更し、脱離エレクトロスプレーイオン化 (Desorption Electrospray Ionization, DESI) を選択する。DESIは空間分解能が低いとされていたが、最新型の技術で20 μmで測定できる技術が開発されたことから、細胞1~2個レベルの範囲で組織切片の可視化が可能である。一方で、組織切片中でのスフィンゴ脂質安定性とバックグラウンドノイズとの分離に課題が想定されるが、我々は、スフィンゴ脂質の安定抽出にDIUTHAMEを、MSにはイオンモビリティによる分離技術を搭載した装置を組み合わせることで高選択的な条件を設定し、大幅な検出感度の向上を図る。また、本技術を応用することで課題3「IMS を用いるスフィンゴ脂質定量法の開発」、課題4「SPNS、S1PR発現遺伝子ノックアウトマウスを用いるスフィンゴ脂質組織分布変化の解析」を一気に加速する予定である。また、これに併せ、連続切片から得られたIMS測定結果の立体的可視化技術開発の基礎的な検証を始める予定である。
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Research Products
(11 results)