2019 Fiscal Year Research-status Report
Physiological roles of hydrogen sulfide and polysulfide
Project/Area Number |
17K08331
|
Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
木村 英雄 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 教授 (30321889)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 硫化水素 / ポリサルファイド / 海馬長期増強 / 3MST / TRPA1チャネル / 統合失調症 / ノックアウトラット |
Outline of Annual Research Achievements |
硫化水素(H2S)及びポリサルファイド(H2Sn)の、シナプスにおける記憶のモデルと考えられている海馬長期増強(LTP)について検討を行うために、H2S及びH2Sn合成酵素である3-mercaptopyruvate sulfurtransferase (3MST)とH2Snの標的分子でアストロサイトに発現しているtransient receptor potential ankyrin 1 (TRPA1)チャネルのノックアウトラットを作成し、さらに3MST-KOラットとTRPA1-KOラットを掛け合わせ3MST-KO/TRPA1-KOダブルKOラットを作成した。現在これらラットを使って、神経伝達およびLTPについて検討を行っている。3MST-KOでは神経伝達効率については、野生型と有意の差が認められないが、LTP誘導が有意に低下している。ここで、H2Snを補充することによって、LTP誘導が回復した。TRPA1-KOラットにおいても、神経伝達効率は野生型と比較して有意の差は認められなかったが、LTP誘導については、有意に低下していた。ダブルKOラットについても、LTP誘導は低下していた。この場合、H2Snを補充しても、LTP誘導は回復しなかった。関連する総説をBr J Pharmに発表した。 H2S及びH2Snと3MSTの統合失調症への関与について、理化学研究所と共同研究を行い、統合失調症の患者脳においては、3MSTが有意に高発現しており、H2S及びH2Snの過剰生産により、cytochrome c oxidase活性が抑制されることによるミトコンドリアのエネルギー生産の低下による神経毒性が、発達期に起こっていることが本疾患に関与していることを明らかにした。成果をEMBO Mol Med に発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年4月に、前職国立精神・神経医療研究センターから、現職山口東京理科大学へ移動し、これに伴い、実験動物を移動したが、移動直後、動物棟において感染がおこり、動物棟が約半年閉鎖となったため、実験の遅れが生じた。 また、コロナ禍による在宅勤務が4月18日から5月31日までとなり、実験が止まっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
3MST-KOラット, TRPA1-KOラット,3MST-KO/TRPA1-KOダブルKOの、LTP誘導について、H2Snの影響や、TRPA1刺激によるアストロサイトからのD-セリンの放出および内在性D-セリン量について、野生型ラットと比較する。また、L-セリンからD-セリンへの変換酵素であるserine lacemase活性、さらにD-セリンを代謝するD-amino acid oxidaseの量や活性について野生型ラットと比較する。これらの検討により、H2S, H2Sn, 3MST, TRPA1のLTP誘導メカニズムを解明する。 統合失調症への関与について、H2S, H2Sn,及び3MSTによって過硫化される脳のたんぱく質をTOF-MASによる網羅的検討により同定する。
|
Causes of Carryover |
2019年4月に前職国立精神・神経医療研究センターから現職山陽小野田市立山口東京理科大学に移動した際、実験動物を移動したが、動物棟の感染により、約半年閉鎖された。また、コロナ禍による大学閉鎖により、2か月の実験遅延が生じた。今後計画に従い、研究を遂行する。
|