2018 Fiscal Year Research-status Report
キュービック相を有する新規脂質微粒子の固体粉末製剤化とその評価
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17K08467
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
野口 修治 東邦大学, 薬学部, 教授 (60237823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 雅隆 東邦大学, 薬学部, 助教 (30792410)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 薬物担体 / 物性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
高難溶性薬物の溶解性向上を簡便に図ることができる新規薬物担体として,キュービック相(立法液晶相)をもつキューボソーム製剤の評価を進めた。その過程で,薬物が液晶相に分子状態で分散している場合に,薬物の化学的環境を評価することが製剤の安定性を評価するためには必要であると考えられた。そこで,X線吸収端近傍構造測定法(XANES)に着目した。どの元素も吸収端と呼ばれるX線に対する吸光度が急激に増加するエネルギー値があり,そのエネルギー領域の吸光度スペクトルはX線吸収原子とその近傍の構造によって特有の形状を示す。XANES測定は元素特異性が高く,薬物が種々の添加剤と共存していても測定は可能であり,また測定試料は固体や液体でも測定可能である。これらの性質から,薬物含有キューボソームが溶液に懸濁している状態あるいは凍結乾燥等により固体粉末状態となったものを始め,製剤一般にXANES法は適用できると考えられる。XANES法の評価を行うために,モデル薬物としてクラリスロマイシン(CAM)塩酸塩水和物の準安定形A型結晶懸濁液と安定形B型結晶粉末のCl-K吸収端XANES測定をあいちシンクロトロン光センターで行った。A型結晶のXANESスペクトルは,CAMのジメチルアミノ基とClイオンがイオン結合を形成しているCAM塩酸塩B型結晶とは異なり,塩酸水溶液のものと酷似していた。この結果はA型結晶中の多くのClイオンは塩酸水溶液中の状態に近いことを示している。A型結晶は溶媒が占める体積の割合は約35%と非常に高い可能性が示唆されており,A型結晶中では,Clイオンは溶媒領域に拡散して水和されているものの割合が高いと考えられた。このように,XANES法を用いれば製剤中の特定元素に着目することで薬物が存在する化学的環境に関する構造情報を得られることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たにXANES法により製剤中の薬物の化学的環境に関する情報に基づく製剤安定性評価が可能と期待できるため,順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
XANES法は固形・液状・半固形など製剤一般の評価に適用可能と期待できる優れた製剤分析法であり,XANES法の適用可能性の評価も推進していく予定である。
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