2018 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of the functional significance of DUSP4 and its therapeutic application in colorectal cancers.
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17K08696
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
一万田 充洋 大分大学, 医学部, 客員研究員 (60770146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪股 雅史 大分大学, 医学部, 教授 (60315330)
衛藤 剛 大分大学, 医学部, 准教授 (00404369)
白下 英史 大分大学, 医学部, 講師 (50596955)
守山 正胤 大分大学, 医学部, 教授 (90239707)
泥谷 直樹 大分大学, 医学部, 准教授 (80305036)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大腸癌 / DUSP4 / MAPK阻害剤 / 有効性予測因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに膵癌の進展にDual-specific phosphatase 4 (DUSP4)の発現低下が関与することを見出しており(Hijiya N et al, Cancer Res. 2016)、より詳細な癌の転移浸潤メカニズムを明らかにし、治療や診断技術の発展および予後改善につなげていくことを目標に研究を行ってきた。本邦の最新のがん統計(国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」)によると、大腸癌は部位別にみると肺癌についで死亡数がもっとも多く、大腸癌の転移浸潤メカニズム解明とそれに基づく有効的な治療法の開発は急務である。現在、大腸癌における分子標的薬として用いられる抗EGFR(上皮細胞増殖因子受容体)抗体薬は、癌浸潤部で活性化しているMitogen-activated Protein Kinase (MAPK)経路などを抑制することで予後改善に効果を示すことが知られている。本研究課題では、DUSP4の発現低下に伴って活性化したMAPKシグナルカスケードが、大腸癌における新たな治療標的になりうるか否かを検討することを目的として、大腸癌手術症例から得た臨床検体を用いて、DUSP4発現の有無を遺伝子レベル・蛋白質レベルで解析した結果、ほとんどの症例(95%)で、浅部(粘膜筋板より粘膜側)の癌細胞ではDUSP4の発現が亢進しているが、深部(粘膜筋板より漿膜側)では消失していることが明らかとなった(Ichimanda M et al, Cancer Sci. 2018)。これら前年度までの成果を踏まえて、今年度は大腸癌においてもDUSP4の発現低下が浸潤能・増殖能の亢進をもたらすことが示唆された。大腸癌に対するMAPK阻害剤の有効性の検討およびMAPK阻害剤の有効性を予測し得る因子の同定を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究計画(下記の3点)について現在実験開始の準備を進めている。 1. テトラサイクリン誘導性DUSP4発現大腸癌細胞株の樹立と機能解析 2. 同所移植モデルの作製とMAPK阻害剤の有効性の検討 3. 大腸癌細胞株パネルに基づくMAPK阻害剤の有効性予測因子の同定 大腸癌の根治手術症例から得た臨床検体を用いた解析結果によれば、ほとんどの症例(95%)で浅部(粘膜筋板より粘膜側)の癌細胞ではDUSP4の発現が亢進しているが、深部(粘膜筋板より漿膜側)では消失していることから、大腸癌細胞株を用いたin vitroでの網羅的解析に行うことでDUSP4発現大腸癌細胞株におけるMAPK阻害剤の有効性予測因子が同定される見通しが立ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は「大腸癌はDUSP4の発現低下により進展する」という仮説に基づいて、大腸癌細胞株を用いた実験を進めていく。前年度に報告した論文でも発表している通り、DUSP4が発現低下しERK活性の亢進している大腸癌細胞株(SNU-1033)にレンチウイルスを用いてDUSP4を一過性に発現させたところ、ERKが不活化し、さらに増殖能の軽度の低下と浸潤能の著明な低下が認められたことから、浸潤した大腸癌におけるDUSP4の発現低下は、ERKの活性化を介して細胞浸潤能および増殖能の亢進に寄与することが見いだされている。DUSP4の発現レベルと癌の転移浸潤に関与するpERKの動態をin vivoで解析するため、免疫不全マウスを用いたヒト大腸癌細胞株同所移植モデルを作成する。また、抗生物質テトラサイクリン誘導体であるドキシサイクリンを投与することで細胞あるいは動物個体において可逆的に目的遺伝子の発現を調節できる実験系(Tet-on/offシステム)を確立し、DUSP4発現を誘導し腫瘍の形成や浸潤、転移の過程におけるDUSP4発現の意義を生体内で解析する。
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Causes of Carryover |
免疫「不全マウスを用いた同所移植モデルの作成」については、本年度に実験を実施する予定であったが、臨床検体を用いたこれまでの実験結果を踏まえて共同研究者らと十分な打ち合わせを行った上で、移植に用いるテトラサイクリン誘導性DUSP4発現大腸癌細胞株の選定することとし、免疫不全マウス移植実験を行わなかったため、マウス購入および飼育に必要な経費分を翌年度に繰り越すこととした。
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Research Products
(1 results)