2018 Fiscal Year Research-status Report
癌腫の肉腫様変化におけるSWI/SNF型クロマチン再構成因子の関与と治療戦略
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17K08722
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
孝橋 賢一 九州大学, 医学研究院, 講師 (10529879)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腎細胞癌 / SWI/SNF / SMARCA4 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎細胞癌では肉腫様あるいはラブドイド様変化と呼ばれる高悪性度変化をきたしうる。それらは各々0.7-13.2%と1.4-4.7%と少数である。今年度は腎細胞癌の肉腫様変化症例41例およびラブドイド様変化症例31例、また、対照として高悪性度変化をきたしていない通常型の腎細胞癌62例に対し、SWI/SNFクロマチンリモデリング因子の発現を検討した。 SMARCA4染色は、明細胞腎癌の場合、明細胞成分及びそれに付随した高悪性度変化成分双方とも発現異常をきたしたものが、35/40例(88%)であった。また、非明細胞腎癌の場合は1/7例(14%)であった。対照とした高悪性度変化を伴っていない腫瘍では明細胞腎癌の29/43例(67%)、非明細胞腎癌の1/7例(14%)で発現異常を認めた。一方、SMARCC1およびSMARCA2は、非明細胞腎癌症例で非高悪性度変化成分及びそれに付随する高悪性度変化成分双方とも発現異常をきたすものが各々1/14例、1/13例ずつ認められた。また、高悪性度変化を伴っていない明細胞腎癌では、SMARCA2の発現異常を2/49例で認めた。 以上の結果から、腎細胞癌が高悪性度変化をきたす要因として、SWI/SNFクロマチンリモデリング因子が有意には関与しないことが示唆された。しかしながら、明細胞腎癌では、高率にSMARCA4発現異常を伴っている。高悪性度変化を伴った腎細胞癌では、元の組織型が不明であることも少なくない。今回の検討から、SMARCA4染色が明細胞腎癌と非明細胞腎癌との鑑別や、高悪性度変化を伴った腎癌における元の組織型診断の鑑別の一助になる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去の文献上、癌腫の肉腫様変化やラブドイド様変化には、SWI/SNFクロマチンリモデリング因子複合体の関与が示唆されている。しかしながら、腎細胞癌に関しては、それとは異なる結果であった。 特に明細胞腎癌では、SWI/SNFクロマチンリモデリング因子複合体の中のSMARCA4に異常が多く認められ、腫瘍発生そのものに関連している可能性も考えられる。以上より、明細胞腎癌の診断ツールになる可能性や、SMARCA4と関連して作用するSMARCA2を阻害することによる抗腫瘍効果の可能性なども示唆され、意義を見出すことができたと考える。 高悪性度変化には今回調べえた蛋白以外のクロマチンリモデリング因子が関与している可能性も考えられるため、引き続きさらなる検討を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な癌腫で肉腫様変化/ラブドイド様変化が認められており、それらについてもSWI/SNFクロマチンリモデリング因子複合体の関与を検討してゆく。仮に、文献上言われている高悪性度変化との関連がなくとも、腫瘍発生との関連性や予後因子となりうるかなどについて、引き続き検討を行う予定である。
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