2018 Fiscal Year Research-status Report
肝癌および非アルコール性肝炎に対する生体内抗酸化因子による治療法の開発
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17K08776
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
吉田 隆文 久留米大学, 医学部, 助教 (30368899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋葉 純 久留米大学, 大学病院, 教授 (00341305)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | NASH / 肝癌 / 抗酸化因子 / 終末糖化産物 / アプタマー |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis)に対してPigment epithelial-derived factor(PEDF)が、NADPH oxidaseを介した抗酸化作用、抗炎症作用による治療効果を発揮することを示した(Yoshida T.,et al.Dig Dis Sci. 2017 Jun;62(6):1527-1536)。NASHの発症には、NADPH oxidaseによる酸化ストレスが関わっていることが解っているが、その発生機序については十分に解明されていない。終末糖化産物(Advanced Glycation End products: AGEs)は、受容体Receptor for AGEs (RAGE)を介して酸化ストレスを促進することが解っている。また、NASH患者ではAGEsの蓄積が示されており、AGEsによる酸化ストレスがNASHの発症に関与している可能性が考えられる。こうした背景からNASHに対するRAGE aptamer の治療効果の検討を行った。マウスNASHモデル(Stelic Animal Model)に対して、RAGE aptamerの腹腔内投与を行った際の組織学的変化および肝内酸化ストレスへの影響を解析した。NASHマウス肝臓ではAGEs、RAGEの発現が亢進していた。RAGE aptamer投与群では、Control aptamer投与群に比べて有意に炎症細胞浸潤と肝線維化が抑制されていた。また、肝内含有ROSおよびNADPH oxidaseコンポーネントの発現がControl aptamer投与群に比してRAGE aptamer投与群で優位に減少していた。これらのことからRAGE aptamerは酸化ストレスの抑制を介してNASHに対する治療効果を有することを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物実験センターの移転に伴ってPEDF受容体(Laminin receptor)トランスジェニックマウスを一時胚凍結しそこから再度胚移植が必要であったため実験に使用するマウスの繁殖に時間を要した。現在準備できたPEDF受容体(Laminin receptor)トランスジェニックマウスを用いて順次実験を開始している。このマウス繁殖の期間に、RAGEアプタマーが抗酸化作用を介してNASHに対して治療効果を発揮することができ現在学会発表準備と論文作成を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はこれまでに検討したヒト肝癌組織におけるPEDF、PEDF受容体(Laminin Receptor)の発現と臨床病理学的パラメータとの関連を総括していくとともにPEDF受容体(Laminin receptor)トランスジェニックマウスを用いた実験により、NASHの進展、肝癌におけるPEDFシグナルの役割を解明していく。
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Causes of Carryover |
動物実験センターの移転に伴いPEDF受容体(Laminin receptor)トランスジェニックマウスの繁殖に時間を要し、次年度に実験が繰り越されたため次年度使用額が生じた。今年度はこのPEDF受容体(Laminin receptor)トランスジェニックマウスを用いてNASHの進展、肝癌におけるPEDFシグナルの役割を検討するために、分子生物学的および組織学的解析の実験を行うために繰り越された助成金の使用を計画している。
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