2017 Fiscal Year Research-status Report
エキノコックス中間ならびに終宿主に対する二方面からの感染圧抑制による疾病制御
Project/Area Number |
17K08815
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Research Institution | Hokkaido Institute of Public Health |
Principal Investigator |
孝口 裕一 北海道立衛生研究所, 感染症部, 主査 (50435567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 隆夫 北海道立衛生研究所, 感染症部, 研究職員 (20753833)
大久保 和洋 北海道立衛生研究所, 感染症部, 研究職員 (10785562)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多包条虫 / エキノコックス / イヌ / ワクチン / 治療薬 / 薬剤 / 粘膜免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
エキノコックス(多包条虫)症は、顧みられない熱帯病(Neglected Tropical disease:NTD)に指定される特効薬の無い寄生虫疾患である。ヒトは終宿主であるイヌ科動物(キツネやイヌ等)の糞便中に排出された虫卵を偶発的に経口摂取する事により発症する。北海道内では年間10-30名の、世界では主に中国で1万人以上の新規患者が発生している状況にある。この疾病の問題点は著効を示すヒトの治療薬や予防薬が無いことにあり、その開発は進んでいない。一方、駆虫薬入り餌(ベイト)の散布を行えば散布地域の終宿主の虫卵排出抑制が認められ、地域住民の感染リスクを低下させることが出来る。本研究の目的は、ヒトを含む中間宿主に対する治療薬の開発とベイト散布をより効果的なものにするための経口ワクチン強化ベイトを開発する事にある。 平成29年度、これまでの研究により多包条虫の幼虫(原頭節)を培養液中で死滅させることが出来る薬剤候補群を用いて、それらをマウスに混餌投与することによりin vivoでの治療効果を調べた。その結果、現在多包条虫症の治療(発育抑制)薬として知られるアルベンダゾール(ABZ)と同等の効果を示す薬剤候補化合物を見出すことができた。 経口ワクチン効果を誘導する物質の探索のため、多包条虫幼虫を凍結乾燥させ、粉末状にし、ワセリンと混合したものをビーグル犬の鼻、口に12週間塗布した後、実験感染を行った。長期の抗原摂取を実施したが、結果として虫体数の著しい減少は認められなかった。現在、これらのイヌから採材された成虫を、培養液中で培養し、来年度実施予定の材料である分泌・排出抗原を大量に調製している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ヒトの治療・予防薬開発を推進するため、薬剤候補群のin vivoでの治療試験とワクチン強化ベイト開発のための経口抗原の探索である。平成29年度の実施計画のとおり、マウスを用いた薬剤候補の混餌投与と感染実験を実施することにより、良好な結果を得ることができた。また、予定通り、多包条虫幼虫の凍結乾燥粉末や成虫からの分泌・排出抗原を大量に調製することが出来た。さらに、感染と駆虫を4回繰返したイヌの感染防御について、再感染初期の腸管内で起きる遺伝子の発現を網羅的に調べることが出来た。この繰返し感染イヌの虫体排除能は、先に報告したように6ヶ月間は維持され、終宿主のワクチン開発には重要な知見であると考えられる。これらの成果は当所のP3レベルエキノコックス専用感染実験施設で行われたものであり、世界的にも貴重なデータであると考えられることから、概ね今年度の目標は達成していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度、多包条虫症治療薬の薬剤候補を感染前から継続的に混餌投与したマウスにおいて、ABZと同等の治療効果を認めた。来年度以降、さらにこの薬剤候補化合物に予防薬としての効果があるのかを調べる予定である。また、29年度に調製した成虫の分泌・排出抗原や、失活させた虫卵抗原などを用いて、イヌに長期的な抗原投与を実施した後、感染実験を行い、経口ワクチンの抗原候補として、感染防御効果あるかどうかを試験する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)予定していた研究打ち合わせを次年度に行うこととしたため。 (使用計画) 平成29年度予定していた研究打ち合わせを平成30年度に行う予定である。
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