2017 Fiscal Year Research-status Report
難治性肺線維症における組織局在性記憶CD4 T細胞の病態制御機構の解明
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17K08876
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
平原 潔 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (00707193)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 真菌感染症 / アスペルギルス / 肺線維化 / CD4組織局在性記憶 / CD103 / Foxp3 / RNA-Seq |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が独自に開発した真菌(アスペルギルス)抗原の長期間反復暴露による慢性気道炎症のマウスモデルを用いて、肺内で誘導される2種類のCD4 組織局在性記憶(Tissue Resident memory T; TRM)細胞による肺線維化の病態制御について解析を進めている。 (1-1) CD103hiおよびCD103lowの2種類のCD4 TRM細胞は、それぞれ全く異なる遺伝子発現パターンを有することが、RNA-Seqを用いた遺伝子発現解析の結果から明らかになった。さらに、それぞれの細胞集団が異なる機能を有することを転写因子、サイトカインの発現を解析したFACSの結果から明らかにした。また、CD4 TRM細胞の組織常在性について、FTY投与およびparabiosisを用いた実験系で検証した。 (1-2) DREGマウス(Foxp3発現細胞特異的にジフテリアトキシン受容体を発現したマウス; ジフテリアトキシンの投与によりFoxp3陽性細胞の除去が可能)を用いて、慢性気道炎症誘導時にFoxp3を高発現するCD103hiのCD4 TRM細胞を特異的に除去した。その結果、アスペルギルス抗原暴露によって誘導される慢性気道炎症が著明に増悪し、線維化が亢進することが明らかになった。 (1-3) CD103hiおよびCD103lowの2種類のCD4 TRM細胞を用いたRNA-Seq解析の結果、CD103hi CD4 TRM細胞とCD103low CD4 TRM細胞の誘導には、それぞれ異なるシグナル伝達物質が深く関与していることが明らかになった。現在、それぞれのシグナル伝達物質の遺伝子改変マウスを用いた実験を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究では、現在は根治療法のない肺線維症の病態解明をめざし、慢性炎症で肺組織内に誘導されるCD4 組織局在性記憶(Tissue Resident memory T; TRM)細胞による肺線維化の病態制御機構を分子・細胞・個体レベルで明らかにすることを目的に研究を行なっている。 今年度は、DREGマウス(Foxp3発現細胞特異的にジフテリアトキシン受容体を発現したマウス; ジフテリアトキシンの投与によりFoxp3陽性細胞の除去が可能)を用いて、慢性気道炎症誘導時にFoxp3を高発現するCD103hiのCD4 TRM細胞を特異的に除去し、アスペルギルス抗原暴露によって誘導される慢性気道炎症が著明に増悪し、線維化が亢進することを明らかにした。この結果は、CD103hi CD4 TRM細胞が、免疫応答を抑制性に制御する機能を有する可能性があることを示唆している。さらに、CD103hiおよびCD103lowの2種類のCD4 TRM細胞を用いたRNA-Seq解析の結果、CD103hi CD4 TRM細胞とCD103low CD4 TRM細胞の誘導には、それぞれ異なるシグナル伝達物質が深く関与していることが明らかになった。それぞれの遺伝子を欠損した遺伝子改変マウスを用いたin vivoの実験の結果からCD103low CD4 TRM細胞は、線維化を伴った気道炎症を惹起する一方、CD103hi CD4 TRM細胞は、炎症を抑制することが明らかになった。現在、以上の結果をまとめて論文投稿準備中である。以上、着実な研究進展が認められており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
CD103hiおよびCD103lowの2種類のCD4 TRM細胞について、詳細な解析を進める。具体的には、これらのCD4 TRM細胞の組織常在性について、(1)Parabiosis(並体結合)の実験による解析、(2)FTY720(リンパ球の血中への移行を阻害する薬剤)を用いた実験による解析を行う。さらに、CD103hiおよびCD103lowの2種類のCD4 TRM細胞について、遺伝子発現パターンの違いを誘導する分子機序について、エピゲノムに着目して、ATAC-Seqを行う。これらの解析の他に、CD4 TRM細胞による肺線維化誘導の機能分子を同定する。 (1-1)CD69陽性CD103陰性CD4 TRM細胞の産生するIL-13の肺繊維化への寄与について、抗IL-13中和抗体の投与実験およびIL-13遺伝子欠損マウス、STAT6遺伝子欠損マウスを用いた実験を行い解析する。 (1-2)2種類のCD4 TRM細胞の遺伝子発現のRNA-Seq解析の詳細な検討から肺線維化を誘導する機能候補分子を同定する。また、肺線維症患者の肺組織での組織局在記憶CD4 T細胞の病態制御機構を解明するため、マウスでの実験結果に基づいて以下の解析を行う。 (2-1)診断・治療目的で採取した肺線維症患者の肺組織を用いて、多重染色法と共焦点レーザー顕微鏡、超解像度顕微鏡による組織局在性記憶CD4 T細胞の同定および周辺構造との連関解析を行う。 (2-2)肺線維症患者の肺組織から単離した組織局在性記憶CD4 T細胞の特徴的遺伝子群をRNA-Seq法を用いて解析する。
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[Journal Article] A T cell-specific deletion of HDAC1 protects against experimental autoimmune encephalomyelitis2018
Author(s)
Goschl L, Preglej T, Hamminger P, Bonelli M, Andersen L, Boucherron N, Gulich A, Muller L, Saferding V, Mufazolov AI, Hirahara K, Seiser C, Matthias P, Penz T, Schuster M, Bock C, Waisman A, Steiner G, Ellmeier W.
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Journal Title
J Autoimmun
Volume: 86
Pages: 51~61
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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