2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K08953
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江頭 伸昭 九州大学, 大学病院, 准教授 (80352269)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 副作用 / 薬理学 / がん化学療法 / 神経障害 / 睡眠 / グルタミン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗がん薬による末梢神経障害と睡眠との関わりを調べるために、ラットに抗がん薬であるオキサリプラチンを連続投与して末梢神経障害動物モデルを作製し、自発運動量測定装置を用いてラットの睡眠リズムを解析した。その結果、暗期の運動量は溶媒群と比較して変化は見られなかったが、明期の運動量は高い傾向が観察された。このことから、抗がん薬による神経障害動物モデルにおいて、睡眠障害が発現していることが示唆されたが、現時点では例数が少ないため今後例数を追加する必要がある。さらに、これらのラットの情動行動を解析したところ、不安行動の指標となる高架式十字迷路でのclosed armの滞在時間や明暗箱試験における暗室での滞在時間が延長し、不安レベルが増加していることが考えられた。 次に、これらの動物モデルの脊髄でのグルタミン酸および睡眠に関係するGABA濃度をin vivo microdialysis法を用いて測定したところ、グルタミン酸濃度が著明に増加し、グルタミン酸トランスポーターであるGLT-1の発現量が有意に減少していることが分かった。さらに我々は、既存医薬品であるリルゾールが、神経障害性疼痛を抑制し、グルタミン酸濃度を減少させることを明らかにした。一方、GABA濃度は変化は見られなかった。これらのことから、グルタミン酸濃度の増加が神経障害の発現に深く関与していること、さらにそのグルタミン酸濃度の増加は一部GLT-1の減少によること、そしてリルゾールが抗がん薬による神経障害性疼痛の治療薬になる可能性が考えられた。 また、神経障害に有効な薬剤を探索するために、NGFを添加したPC12細胞を用いて、オキサリプラチンおよびパクリタキセルによる細胞障害および神経突起の伸展阻害を指標として、メラトニン受容体などに作用する睡眠関連薬剤の作用を評価しているが、現時点では保護効果を示す薬剤は認められていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的であるがん化学療法における神経障害と睡眠障害との関わりについて、動物モデルでの基礎研究については概ね順調に進んでおり、神経障害における睡眠障害の関わりや情動障害の発現などを明らかにした。さらに既存医薬品であるリルゾールが、抗がん薬による神経障害性疼痛の治療薬になる可能性を見出した。一方、電子カルテによる患者データによる解析では、カルテに睡眠障害の十分な記載がされていないために情報を収集することが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
神経障害と睡眠との関わりについては、例数追加やさらに詳細な検討を行い、睡眠障害のメカニズムの解明や痛みとの関わりについて検討を行う予定である。次に、神経障害に有効な薬剤の探索については、前年度からの培養細胞を用いた検討を継続するとともに、有効な候補薬剤が見つかれば、末梢神経障害動物モデルを用いて薬剤の効果を評価する予定である。一方、神経障害と睡眠障害の発現状況の把握については、前年度からの調査を継続するとともに、アンケート調査など他のアプローチについて検討する必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
今年度、培養細胞を用いて神経障害に有効な薬剤を探索したが、該当する薬剤が見つからず、追加検討が生じなかったために次年度使用額が生じた。次年度は、今回の使用額を予定の助成金と合わせて使用し、前年度に引き続き神経障害に有効な薬剤の探索とともにメカニズムなどの追加検討を行う予定である。
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Research Products
(4 results)