2017 Fiscal Year Research-status Report
冠疾患集中治療室入室患者における急性腎障の病態解析と発症予測パネルの構築
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17K08995
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
石井 潤一 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (70222940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成瀬 寛之 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (50319266)
松井 茂 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 准教授 (20308901)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 冠疾患集中治療室 / 急性腎障害 / 尿中L型脂肪酸結合蛋白 |
Outline of Annual Research Achievements |
外科的集中治療室(ICU)では、急性腎障害は高率(30%)に発症し、その死亡率は高い。一方、重篤な循環器内科疾患を治療する冠疾患集中治療室(CCU)における急性腎障害に関しては十分に検討されていない。急性腎障害発症患者の予後改善には、より早期に診断し、治療介入する必要がある。近年、尿細管障害の指標である尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)濃度や尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)濃度は血清クレアチニンより早期に急性腎障害を診断できることが示されている。本年度の目的は、重篤な循環器内科疾患を治療するCCU入室患者における急性腎障害の発症率と、急性腎障害と入室時尿中L-FABP濃度との関係を検討することである。 登録されたCCU入室患者1100例の内、急性冠症候群患者は560例、急性心不全患者は460例であった。2012年にKidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)から公表された「急性腎障害診療ガイドライン」に基づいて診断された急性腎障害は209例(19%)であった。急性心不全患者における急性腎障害の発症率は急性冠症候群患者より高率であった。急性腎障害発症例における尿中L-FABP濃度は非発症例に比べて著しく高値であった。多変量解析(多重ロジスティク回帰分析)の結果では、臨床背景、診断名、冠危険因子、心血管合併症などの患者背景や臨床検査パラメータで補正後も、尿中L-FABP濃度の高値は急性腎障害の重要な規定因子であった。 本年度の研究成績から、重篤な循環器内科疾患を治療するCCU入室患者の約20%において急性腎障害は発症し、その発症の早期予測に尿中L-FABP濃度の測定は有用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに(平成29年度中に)CCU入室患者1100例を本研究に登録した。登録時に採取した検体は平成29年度科研費の設備備品費で購入した超低温フリーザーに保存されている。平成30年度中に2000例の登録を目指しているので、目標症例数の55%の登録が完了したことになる。登録症例は電子カルテから年齢、性別、診断名、冠危険因子、心血管合併症などの患者背景や臨床検査パラメータをデータベースに入力し、通常の診療を継続しながら、急性腎障害の診断と、短期予後(6ヶ月死亡)の前向き観察研究を開始している。 本年度の研究成績から、重篤な循環器内科疾患を治療するCCU入室患者の約20%において急性腎障害は発症し、その発症の早期予測に尿細管障害の指標である尿中L-FABP濃度の測定は有用であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究への登録症例数を増やし、平成30年度中に2000例を目指している。登録症例は電子カルテから年齢、性別、診断名、冠危険因子、心血管合併症などの患者背景や臨床検査パラメータをデータベースに入力し、通常の診療を継続しながら急性腎障害の診断と、短期予後(6ヶ月死亡)についての前向き観察研究を継続していく。 急性腎障害は多彩な病態からなる疾患概念であるため、単一のバイオマーカーによる病態把握には限界がある。それぞれのバイオマーカーの変動には特性があり、複数のバイオマーカーを組み合わせることによって、急性腎障害の病態をより詳細に評価することが可能となり、発症予測や予後推定にも寄与すると思われる。今後は尿細管障害マーカーである尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、糸球体障害マーカーである尿中アルブミン、動脈硬化マーカーであるsmall dense LDL、酸化ストレスマーカーである酸化リポプロテイン(a)、炎症マーカーであるプレセプシンなどを測定し、これらのバイオマーカーと、急性腎障害と短期予後(6ヶ月死亡)との関連について検討し、複数のバイオマーカーを組み合わせた急性腎障害予測パネルを構築する予定である。 次年度は、small dense LDL、酸化リポプロテイン(a)、尿中NGALなどを測定する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、登録時に採取した検体を保存するため超低温フリーザーを購入した。今後は、複数のバイオマーカーを組み合わせた急性腎障害予測パネルを構築するため、動脈硬化の指標であるsmall dense LDL、酸化ストレスマーカーである酸化リポプロテイン(a)、尿細管障害マーカーである尿中NGALなどの測定を行う予定である。そのため研究はおおむね順調に進展しているが、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)