2018 Fiscal Year Research-status Report
冠疾患集中治療室入室患者における急性腎障の病態解析と発症予測パネルの構築
Project/Area Number |
17K08995
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
石井 潤一 藤田医科大学, 医学部, 教授 (70222940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成瀬 寛之 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (50319266)
松井 茂 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (20308901) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 冠疾患集中治療室 / 急性腎障害 / L型脂肪酸結合蛋白 |
Outline of Annual Research Achievements |
外科的集中治療室では、尿細管障害マーカーであるL型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)や好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)の尿中濃度は血清クレアチニン濃度より早期に急性腎障害(AKI)を診断できることが示されている。しかし、重症の循環器内科疾患を治療する冠疾患集中治療室(CCU)におけるAKIに関しては十分に検討されていない。本年度の目的は、CCU入室患者において、尿中L-FABP濃度、左心室負荷マーカーである血清N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)濃度、易動脈硬化性マーカーである血清small dense LDL (sdLDL)濃度と、AKIおよび短期予後(6ヶ月死亡)との関係を明らかにすることである。 CCU入室患者1273例の内、急性冠症候群患者は588例、急性心不全患者は485例であった。AKI発生例は224例(18%)であった。AKI発生例におけるL-FABP、NT-proBNPとsdLDLはAKI非発生例より有意に高値であった。臨床背景、診断名、冠危険因子などの患者背景や臨床検査パラメータを含めた多重ロジスティック解析では、L-FABPとNT-proBNPは有意な独立した規定因子であったが、sdLDLは有意ではなかった。 入室後6ヶ月以内に94例(7.4%)が死亡した。死亡例におけるL-FABP、NT-proBNPとsdLDLは生存例に比べて有意に高値であった。臨床背景、診断名、冠危険因子などの患者背景や臨床検査パラメータを含めたCox比例ハザードモデルでは、NT-proBNPは有意な短期予後の規定因子であったが、L-FABPとsdLDLは有意ではなかった。 本年度の研究成績から、CCU入室患者の18%においてAKIは発症し、その発症の早期予測に尿中L-FABPと血清NT-proBNP濃度の入院時測定が有用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CCU入室患者1273例を本研究に登録した。登録時に採取した検体は平成29年度科研費の設備備品費で購入した超低温フリーザーに保存されている。登録症例は電子カルテから年齢、性別、 診断名、冠危険因子、心血管合併症などの患者背景や臨床検査パラメータをデータベースに入力し、急性腎障害(AKI)の診断と、短期予後(6ヶ月死亡)の前向き観察研究を終了している。 本年度のL-FABPとNT-proBNPの測定結果から、一編の英文論文を作成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
急性腎障害(AKI)は多彩な病態からなる疾患概念であるため、単一のバイオマーカーによる病態把握には限界がある。それぞれのバイオマーカーの変動には特性があり、複数のバイオマーカーを組み合わせることによって、AKIの病態をより詳細に評価することが可能となり、発症予測や予後推定にも寄与すると思われる。L-FABPは尿細管の虚血障害を、NGALは尿細管の炎症を反映していることから、我々は両者が異なる尿細管障害の病態を評価していると考えている。最終年度(令和1年度)は尿細管の炎症マーカーである尿中NGAL、単球活性のマーカーである血清プレセプシン濃度などを測定し、AKIと短期予後(6ヶ月死亡)との関連について検討し、これらのバイオマーカーをL-FABPとNT-proBNPに組み合わせることがAKI発症予測の精度を改善するかについて検討する。研究成果は2019年11月の米国心臓病学会(フィラデルフィア)で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はL-FABP、NT-proBNPおよびsdLDL濃度を測定した。その結果から一編の英文論文を作成した。次年度は平成29年度科研費の設備備品費で購入した超低温フリーザーに保存してある検体を用いて、尿中NGAL濃度などを測定する。研究成果は2019年11月の米国心臓病学会(フィラデルフィア)で発表する予定である。
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