2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the pahogenesis of auto immune-bone marrow failure with human hematopoietic stem cells derived from iPS cells
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17K09007
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
片桐 孝和 金沢大学, 保健学系, 助教 (60621159)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自己免疫疾患 / iPS細胞 / 造血幹細胞 / HLA / 骨髄移植 / 免疫不全マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫性骨髄不全症の発症は、CTLによる造血幹前駆細胞の傷害がきっかけとなる自己免疫疾患であり、代表的な疾患として再生不良性貧血がある。本疾患では、第6番染色体短腕上のHLA遺伝子を含む領域で、片親由来のHLAのゲノムコピー数が減少し、正常にHLA分子が発現されないことが明らかになっている(6pLOH)。この現象は、造血幹前駆細胞がCTLからの免疫学的攻撃を自発的に回避するための1つの手段であり、安定的な血液供給のための恒常性維持機構と考えられる。その現象を別角度から解釈すると、特定のHLA分子の発現を自発的に制御することは、そのHLAによって提示されていた分子こそが、CTLの標的分子であり、この分子を同定することが本疾患の根本的な病態解明に直結しているものと考えられる。 この2年間の研究で、6pLOH陽性例であっても、NGSにより特定HLA遺伝子領域における変異を確認した結果、HLA-B*4002というHLA-B61分子の遺伝子領域に変異を起こしている例が存在することを明らかにした。さらに6pLOHが陰性であっても、HLA-B61分子の発現を単独で欠失した症例を同定することに成功し、CTLにより攻撃を受けた造血幹前駆細胞が、その攻撃を回避するための多様なメカニズムを明らかにした。 また、本症例の末梢血単球からiPS細胞を樹立し、様々な表現型を有する造血幹前駆細胞クローンを誘導することに成功した。さらに、誘導した造血幹前駆細胞からCD34陽性細胞を分離し、BRGS(免疫不全)マウスに骨髄移植を行うことで、造血系において特定の表現型を有するヒト造血マウスモデルの作製に成功した。 従って、当初の計画通り、病態に関与している可能性の高いTCRを同定し、トランスフェクタントの作製を経て、ex vivo、in vivoにおけるCTLの機能を評価する最終段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究で、iPS細胞由来造血幹前駆細胞を移植し作製されたヒト造血マウスにおいて、造血前駆細胞ごとに関連分子の発現を確認したところ、特定の表現型由来のiPS細胞から誘導した造血幹前駆細胞を移植したマウスでは、複数の分子の発現に乖離が認められたことから、造血幹前駆細胞の挙動に対して何らかの機序が作用し、特定の造血集団において造血優位性を獲得している可能性が示唆された。 本疾患では、自己免疫が異常となっており、免疫抑制剤により自己免疫反応を制御するのが一般的な治療法である。本症例は、免疫抑制療法に依存性があり、約3年ごとに再燃する例である。従って、免疫抑制療法により寛解状態であったとしても、何らかの免疫異常は体内で継続しているため、正常細胞がドミナントにならないことが考えられた。実際に、末梢血中で認められる血液細胞の表現型は多様であった。 そこで、各表現型を有するiPS細胞由来造血幹前駆細胞を、同細胞数ずつ、あるいは細胞数を変えてBRGS(免疫不全)マウスに骨髄移植したところ、非常に興味深いことに、マウス体内で特定の表現型を有する造血幹前駆細胞のみが選択的に増殖し、その他の表現型を有する造血幹前駆細胞による造血はほとんど認められなかった。マウス体内では、患者の免疫細胞は存在していないため、移植されたiPS細胞由来造血幹前駆細胞はCTLからの攻撃を受けることなく、個々の表現型を有する造血幹前駆細胞ごとに本来の造血態度を振る舞うことになる。従って、本実験の結果から、特定の表現型を有するiPS細胞由来造血幹前駆細胞は、造血寄与への貢献度が高く、免疫異常が起きている患者体内であれば尚更、特定の造血幹前駆細胞が継続的に造血を維持することが示唆された。この結果は、本症例の臨床経過を考察した結果と一致しており、平成31年度の研究につながる大変興味深いデータを得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究は、計画通り、特定の表現型を有するiPS細胞を作製し、誘導した造血幹前駆細胞をBRGS(免疫不全)マウスに移植することで、ヒト造血マウスの作製に成功した。このマウスを対象として、同定したTCRを有するCTLによる病態を再構築し、CTLの対象分子を同定するために、また、特定の表現型を有する造血幹前駆細胞のみが選択的に増殖するメカニズムをゲノムレベルで明らかにするために、以下の実験を行う予定である。 複数同定したCTLをヒト造血マウスに輸注し、6pLOH陰性またはHLA-B61が正常に発現しているマウス(野生型)のみで造血抑制が認められる一方で、6pLOH陽性またはHLA-B61分子の発現が欠失した造血幹前駆細胞を移植したマウスにおいては、CTLの輸注による造血制御を免れる、というCTLを最終的に同定する。また、特定のHLA分子の遺伝子を導入した血液系細胞株を標的としたin vitroの実験により、CTLの機能を評価するとともに、特定の細胞株への攻撃性あるいは非攻撃性を包括的に評価する。 また、平成30年度に実施した、クローンごとの造血能力を評価した実験で、特定の表現型を有する造血幹前駆細胞のみが選択的に増殖し、その他の表現型を有する造血幹前駆細胞による造血はほとんど認められなかった。この実験結果の原因を明確にするため、①末梢血中で認められる各表現型由来DNAとRNA、②各iPS細胞由来DNAとRNA、③各iPS細胞由来造血幹前駆細胞中のCD34陽性細胞由来DNAとRNA、④ヒト造血マウスから採取したCD34陽性細胞由来DNAとRNA、以上の①から④を対象として、RNA-seqによる網羅的アレイ解析を行い、特定分子の経時的挙動を評価することにより、特定の表現型を有する造血幹前駆細胞のみが選択的に増殖するに至る原因遺伝子を同定する。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Loss-of-Function Mutations in HLA-Class I Alleles in Acquire Aplastic Anemia: Evidence for the Involvement of Limited Class I Alleles in the Auto-Antigen Presentation of Aplastic Anemia.2018
Author(s)
Hiroki Mizumaki, , Kazuyoshi Hosomichi, Tanabe Mikoto, Takeshi Yoroidaka, Tatsuya Imi, Yoshitaka Zaimoku, Kohei Hosokawa, Takamasa Katagiri, Hiroyuki Takamatsu, Tatsuhiko Ozawa, Fumihiro Azuma, Hiroyuki Kishi, Atsushi Tajima and Shinji Nakao.
Organizer
60th American Society of Hematology Annual Meeting
Int'l Joint Research
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[Presentation] Escape Hematopoiesis By HLA-B5401-Lacking Hematopoietic Stem Progenitor Cells in Male Patients with Acquired Aplastic Anemia.2018
Author(s)
Kohei Hosokawa, Mahmoud Ibrahim Elbadry, Hiroki Mizumaki, Luis Espinoza, Noriharu Nakagawa, Kazuhisa Chonabayashi, Yoshinori Yoshida, Takamasa Katagiri, Yoshitaka Zaimoku, Tatsuya Imi,, Nguyen Thi Mai Anh, Yoichi Fujii, Seishi Ogawa, Katsuto Takenaka, Koichi Akashi and Shinji Nakao.
Organizer
60th American Society of Hematology Annual Meeting
Int'l Joint Research
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[Presentation] Limited class I HLAs are involved in the auto-antigen presentation in acquired aplastic anemia.2018
Author(s)
Mikoto Tanabe, Hiroki Mizumaki, Tatsuya Imi, Takeshi Yoroidaka, Noriharu Nakagawa, Ken Ishiyama, Hirohito Yamazaki, Yoshitaka Zaimoku, Takamasa Katagiri, Kazuyoshi Hosomichi, Atsushi Tajima and Shinji Nakao
Organizer
第80回日本血液学会学術集会
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