2017 Fiscal Year Research-status Report
直接導入型タンデム質量分析計による薬毒物迅速検査システムの構築に関する研究
Project/Area Number |
17K09285
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
井上 博之 科学警察研究所, 法科学第三部, 部長 (40159992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 康雄 科学警察研究所, 総務部, 副所長 (10154668)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 薬毒物 / 社会医学 / 法中毒学 / 質量分析 / スクリーニング / 血液 / 揮発性毒物 / 乱用薬物 |
Outline of Annual Research Achievements |
法医学領域において中毒事例あるいはその可能性を疑う事例は増えており、中毒原因物質を早期特定する重要性も増大し、迅速測定するための手法開発は重要なテーマである。本研究課題では、逆流型大気圧化学イオン化質量分析技術を利用し、シアン、アジ化物などの揮発性毒物を含む広範な薬毒物を対象とした迅速、簡便、高精度な一斉検査システムを開発することを目的とする。そのため、シアン、アジ化物、硫化水素、シンナー、トルエン、アルコール類等の揮発性物質、農薬(有機リン系、カルバメート系、パラコート等)、向精神薬、規制薬物(麻薬、危険ドラッグ)を測定対象物質とし、初期段階では各群単位で測定条件を最適化し、統合する。 本研究の重要な要素である直接導入型質量分析計として、逆流型大気圧化学イオン化質量分析計を用いる。試験溶液をガラスろ紙上に滴下し、約250℃に加熱されたヒーター部に挿入する。気化した試料は、イオントラップ型質量分析部で測定される。これにより、分子量情報を与えるシングルMSモードと開裂パターン情報を与えるタンデムMSモードによる測定が可能である。 本年度はシアン及びアジ化物を対象物質とした。アルカリ水溶液中のシアンイオン及びアジ化物イオンは、負イオン測定モードで検出可能であったが、その感度は注入量として、それぞれ200 ng及び10 ng程度であり、中毒レベルのヒト生体試料を測定するための高感度化が必要であった。そこで、ペンタフルオロベンジルブロミド及びテトラデシルジメチルベンジルアンモニウムによる誘導体化処理を行い、直接導入型質量分析計にて測定したところ、シアンについては特徴的なイオンが確認されたが、遊離体を大きく上回る感度向上は得られなかった。また、2,3-ナフタレンジアルデヒドによる誘導体化物を作製し、同様に測定したが、目的する特徴的なイオンは検出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画していた、シアン及びアジ化物を誘導体化し高感度検出する条件設定がまだ見つからない。GC/MS及びLC/MS分析の結果、シアンについては確実に誘導体化されていることが確認されたため、試料導入部周辺で分解もしくは揮散している可能性が考えられた。今後、ヒーター部を介さずにガス試料を直接イオン源に導入できるように装置を改良し、測定を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
シアン及びアジ化物を含めた揮発性毒物の測定系が確立できるよう研究継続するとともに、他の薬毒物(農薬、医薬品、規制薬物など)を本システムで測定するための諸条件を最適化する。
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Causes of Carryover |
本年度購入申請していた、装置改良のための部品が一部受注生産品のため納期が遅れ、執行できなかった。繰越金は、次年度納品の支払いに充てる。
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