2018 Fiscal Year Research-status Report
直接導入型タンデム質量分析計による薬毒物迅速検査システムの構築に関する研究
Project/Area Number |
17K09285
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
井上 博之 科学警察研究所, 法科学第三部, 部長 (40159992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 康雄 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, グループディレクター (10154668)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 薬毒物 / 社会医学 / 法中毒学 / 質量分析 / スクリーニング / 血液 / 揮発性毒物 / 乱用薬物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は薬毒物を自動判定するための手法開発を目的として、ハーブ製品あるいは粉末製品中に存在する危険ドラッグを対象として検討を進めた。 方法:逆流型大気圧化学イオン化質量分析計を用いた。試験溶液の一部をガラスろ紙上に滴下し(固形試料の場合は、1 mg以下程度を2枚のガラスろ紙で挟み)、320℃に加熱されたヒーター部に挿入した。気化した試料は、イオントラップ型質量分析部で測定され、シングルMSモードで一定強度以上のイオンについて、タンデムMSモードでの測定を行った。 結果:合成カンナビノイドJWH-250、JWH-081及び5F-QPICの標準品は、フルスキャンMSモードにおいて、それぞれのプロトン化分子に相当するm/z 336, 372及び377に主要なイオンを有した。プロトン化分子の衝突誘起解離を利用したタンデムMSモードにより、JWH-250ではm/z 121, 188及び91に特徴的なプロダクトイオンを与えた。また、合成カチノンα-PVT、α-PHP及びα-POPは、フルスキャンMSモードにおいて、それぞれm/z 238, 246 及び274にプロトン化分子を有するとともに、タンデムMSモードにおいて、それぞれ特徴的なプロダクトイオンを与えた。21種類のハーブ等製品を同様に分析したところ、フルスキャンモード及びタンデムMSモードの両方で特徴的なイオンを示した。化合物の自動同定は、特徴的なイオンの質量数及び強度を内蔵の薬物データベースのそれらと比較することによって行うことができた。ただし、この測定系では、いくつかの異性体の組み合わせ、例えば、4-メチルエチカチノンとN-エチルブフェドロンの識別は困難であった。本法はサンプル前処理や分離工程を必要とせず、また客観的な自動判定が可能であり、ハーブ製品中の危険ドラッグの迅速スクリーニングに適用可能と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
シアン及びアジ化物を誘導体化し高感度検出する条件設定を継続検討中である。農薬については、メソミルの測定に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
シアン及びアジ化物を含めた揮発性毒物の測定系が確立できるよう研究継続するとともに、他の薬毒物(農薬、医薬品、規制薬物など)を本システムで測定するための諸条件を最適化する。
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Causes of Carryover |
購入予定していた試薬の一部について、年度内の納品が困難であることが判明した。次年度あらためて購入手続きを進める予定である。
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