2017 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質分解を標的としたATP産生増強による新規虚血性心疾患治療法の開発
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17K09577
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 久和 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30589312)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ATP / 心不全 / タンパク質分解 / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓は絶え間ない自律拍動により莫大なATPを産生し消費する。虚血心筋では、ATPの供給と需要のバランスが崩れ心不全発症の大きな要因となる。しかし虚血時において直接的にATP産生を増強して臓器保護を促すような治療法は未だ開発されていない。近年研究代表者らは低酸素によって発現誘導されミトコンドリアATP産生を増強させる因子としてG0S2を同定した。またG0S2タンパク質はその寿命が短く、ユビキチンプロテアソームによって制御されていることを見出した。そのタンパク質寿命を延長させることによってATP産生の増強を可能にする創薬候補化合物の同定は虚血性心疾患の新たな治療法の開発につながると期待される。 平成29年度では、これまでに構築した蛍光レポーター融合G0S2発現細胞株と、高精度かつ高感度に生細胞内蛍光強度を定量評価できるハイコンテントスクリーニング装置を用いて、大阪大学産学共創本部から提供された化合物約50,000種類のスクリーニングを行った。その結果、数%のヒット化合物を得た。得られたヒット化合物について、偽陽性や非特異的なプロテアソーム阻害剤を除くカウンタースクリーニングを実施し、ヒット化合物を絞り込んだ。これらのヒット化合物のうち、いくつかについてはWestern Blotにより実際にG0S2タンパク質の蓄積を確認することができた。現在はG0S2タンパク質を増加させる化合物が、実際に心筋細胞においてATP産生を増強させるかについて検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は化合物5万を細胞ベースのアッセイ系でスクリーニングすることを計画していた。一次スクリーニングは大きな遅れがなく5万化合物をスクリーニングし終えることができた。その結果、数百のヒット化合物が得られ、またカウンターアッセイを行うことによって、化合物そのものがもつ蛍光や細胞毒性による蛍光の変化などの偽陽性を排除することができ、G0S2タンパク質に比較的特異的に作用していると考えられるヒット化合物を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、まずヒット化合物が心筋細胞で実際にATP産生能を増強させるかについてさらに検討し、構造活性相関を得ることに努める。方法としては、これまでに研究代表者らが開発したATP感受性FRETプローブを用いたアッセイおよび、セミインタクト細胞を用いたATP産生速度測定系を用いる。また本スクリーニングで得られたヒット化合物は、G0S2タンパク質に直接的に相互作用しているとは限らない。ある程度構造活性相関が得られた段階で、ヒット化合物の固定化ビーズによって化合物の直接的な標的タンパク質を探索していく予定である。
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Causes of Carryover |
G0S2タンパク質の分解を抑制する化合物の1次スクリーニングを予定通り完了したが、得られたヒット化合物についての再現性確認と絞り込みのためのカウンターアッセイを慎重に進めているため、当該年度内に予定していたATP産生能の検討実験を一部次年度に行うこととした。そのために次年度使用額が発生した。 当初の予定から一部持ち越したヒット化合物によるATP産生能への影響の検討実験を次年度に行う予定としている。おおむね研究の進捗には影響せず次年度は計画書通りに研究を遂行する予定である。
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Research Products
(3 results)