2018 Fiscal Year Research-status Report
非扁平上皮非小細胞肺癌への殺細胞性抗癌剤効果予測タンパク質のプロテオミクス探索
Project/Area Number |
17K09620
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
堀田 信之 横浜市立大学, 医学研究科, 客員講師 (50616448)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 猛 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (90275066)
原 悠 横浜市立大学, 医学部, 助教 (70806299)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 肺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
殺細胞性抗癌剤の非扁平上皮非小細胞肺癌への治療効果は患者により異なり、投与前の治療効果の予測は困難である。治療前に癌細胞内のタンパク質により治療効果の予測ができれば、治療選択に有用である。今研究では、パラフィン埋没病理標本上の癌細胞に対しプロテオミクスによる網羅的解析を行い、バイオマーカーとなるタンパク質をスクリーニングした。これらにより臨床利用可能な殺細胞性抗癌剤の非扁平上皮非小細胞肺癌の治療効果バイオマーカーを特定することを目的として今研究を行っている。非小細胞肺癌を主体とする原発性肺癌は 1998 年以降わが国の癌死因の第1位を占める重要疾患である。非小細胞肺癌の診断時には根治不能のIIIb-IV期の進行癌となっている患者が大半である。根治不能な進行非小細胞肺癌の治療には抗癌剤治療を主体とする治療を行うことにより、平均では生命予後を年単位で伸ばすことが可能である。その為、非進行非小細胞肺癌の診断時に年齢・体力・臓器機能が許せば、抗癌剤治療を行うことが一般的である。また、16141例を対象とした私たちの解析では、未治療非小細胞肺癌に対してはCBDCA+Paclitaxel+BEV、CBDCA+PEM+BEV、CDDP+PEM、CBDCA+PEM、CDGP+DTX等が全生存期間の延長に寄与することが示唆された(Horita et al. Sci Rep. 2017;7(1):13185.)。更に、高齢者285人を対象とした解析では、根治不能の非扁平上皮非小細胞肺癌に対してCBDCA+PEMが有効であり、全生存期間14.9か月が観察された(Horita et al. Asia Pac J Clin Oncol. 2018)。プロテオミクス解析により、現時点までに抗癌剤治療の効果予測の候補タンパクが15特定できており、学会での報告を検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロテオミクスは、特殊で高額な機械を用いて、数百~数千種類のタンパク質の発現量を、少数の患者に対して測定可能な技術である。そのため、日常臨床の検査には有効性が低いが、特定の疾患患者群、特定の治療効果群などに共通するタンパク質バイオマーカーの検出にはきわめて有用な技術である。私たちは、非扁平上皮非小細胞肺癌に対する抗癌剤の治療効果を予測する新しいバイオマーカーの探索を行っている。私たちはプロテオミクスを用いた網羅的解析により、肺癌手術後の再発・予後を予測するマーカーを特定し報告している[Okayama et al. J Proteome Res 2014;13:4686]。しかし、術後再発の予測は手術時点の画像検査で検出できない微小転移の有無が重要なファクターであり、術後再発/術後予後の予測と抗癌剤治療の効果予測は別物である。EGFR遺伝子変異、TSタンパク質の殺細胞性抗癌剤の効果予測のマーカーとしての意義は網羅的検索からでなく、遺伝子・タンパク質の生理活性から推測され、確認されたマーカーである。プロテオミクスによる網羅的解析により、現時点で機能的に重要視されていないタンパク質が治療効果予測因子と特定できる可能性がある。私達は既に10例(予後良好5例、予後不良5例)の患者の病理検体にてLC/MS/MSを用いたプロテオミクス解析を行い、殺細胞性抗癌剤の治療効果および生命予後と関連するタンパク質をスクリーニングをし、15個のタンパク質を特定した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までに特定されたたんぱく質に対して、H29年度には後ろ向き再現性評価を予定している。単施設後方視的研究でH24年度よりH28年度に局所進行および進行非扁平上皮非小細胞肺癌に対して殺細胞性抗癌剤治療を受けた患者のうち、残余病理検体の使用が可能であり、一次治療開始から1年以内に転院していない患者であり、オプトアウトの希望のない200例を連続的に対象とする。電子カルテから、年齢、性別、EGFR変異/ALK転座の有無、投与された抗癌剤の種別、投与期間、奏効率、全生存期間、無増悪生存期間に関するデータを抽出する。スクリーニングにて特定された15のタンパク質と奏効率、全生存期間、無増悪生存期間との関連を評価する。タンパク質の発現は下記の2手法を併用する。①未染色のパラフィン埋没標本切片に対し、免疫組織化学的染色(ペルオキシダーゼ間接法)による抗体発現の有無を評価する(図1)。②未染色のパラフィン埋没標本切片よりタンパク質を抽出し、Western Blotを行い該当タンパク質の存在を量的に評価する。奏効率はLogistic Regressionにて解析し、全生存期間、無増悪生存期間はCox Proportional Hazard Modelにて解析する。いずれの解析でも、年齢・性別・投与した抗癌剤の種別・EGFR変異/ALK転座の有無を調整して解析する。H30年度以後は前向き再現性評価を予定している。多施設共同非介入前向き研究での患者リクルートを行い、データベースを作成する。後ろ向き再現性評価にて治療効果との関連の見られたタンパク質に対して再現性を前向きに再評価する。
|
Causes of Carryover |
平成30年度の予算として標的タンパク質に対する抗体(免疫組織化学染色用)、市販抗体入手不能なタンパク質に対する抗体作成関連試薬、Western Blot関連試薬、消耗物品(ゲル、プライマー、メンブレン、バッファー、ブロッキング剤、標識二次抗体、等)、参考文献管理ソフト(Nndnote X7)、学会旅費、Publication Fee(学術雑誌に対する論文毎の出版費)、コピーFAX複合機レンタル、富士ゼロックス1台、を計上していた。当研究室の在庫の使用および他の研究用の備品の使いまわしにより予算が縮小された。また実験計画の変更等により購入予定の物品の一部を使用しなくなった。上記の理由により次年度繰越金が生じた。繰り越した基金については次年度の研究計画と合わせ適切に使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)