2018 Fiscal Year Research-status Report
セレノプロテインPを標的とした新規糖尿病治療薬の結晶構造解析に基づく開発
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17K09822
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
菊地 晶裕 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 特任助教 (90321752)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 2型糖尿病 / ヘパトカイン / セレノプロテイン / タンパク質間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
セレノプロテインP(SeP)の過剰分泌は、肝臓や骨格筋にインスリン抵抗性を惹起する。さらに、過剰なSePはLDL受容体ファミリーに属するLRP1を介して骨格筋に取り込まれ、運動抵抗性を引き起こす要因となる。本研究では、SePの構造解析およびSePと受容体との相互作用解析を行うことで、SePを標的とした阻害剤を見出し、インスリン抵抗性関連疾患に対する新規な治療法の開発を目指している。 本年度は、分子間相互作用解析装置(Biacore)を用いてシステイン置換体SeP(cSeP)とApoER2(LRP8)との相互作用解析を行った。LDL受容体ファミリーに属するApoER2のドメイン構造はLRP1と類似しており、実際、精巣や脳ではSeP受容体として機能している。解析の結果、cSePはApoER2に結合するが、極めて解離しにくく、EDTA存在下においてもApoER2から解離しなかった。ApoER2の一般的なリガンドはリガンド結合ドメインに結合する。そこで、リガンド結合ドメインに変異を導入したApoER2を用いて相互作用解析を行ったところ、cSePは変異型ApoER2に対しても野生型ApoER2と同程度の結合を示した。これらの結果は、ApoER2のリガンド結合ドメイン以外のドメインにcSePが結合することを示唆している。細胞を用いたcSePとApoER2の相互作用解析に関する既報(J Biol Chem 2014)では、ApoER2のベータプロペラドメインにcSePが結合するとの報告がなされており、本研究の結果とも矛盾しない。従って、SePは極めてユニークな結合様式でApoER2と結合して細胞内に取り込まれると考えられる。今後、天然型SePを用いてApoER2との相互作用解析を行うとともに、LRP1との相互作用解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属研究機関変更(金沢大学から生理学研究所)があり、タンパク質精製装置や相互作用解析装置の系を新たに立ち上げる必要などが生じたため、計画よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
システイン置換体SeP(cSeP)がApoER2と複合体を形成しやすいこと、極めて解離しにくいこと、さらに、その結合様式が極めてユニークであることを明らかにすることが出来た。そこで、構造解析に関してはcSePとApoER2との複合体の結晶構造解析を中心にして進める。また、複合体は分子量も大きくなることから、電子顕微鏡を用いた構造解析が可能であるとも考えられるため、今後、検討したい。 現時点では、cSePとApoER2のユニークな結合様式は、SePに含まれるすべてのセレノシステインをシステインに置換したことによる影響であることも否定できない。そこで、天然型SePとApoER2、さらにLRP1との相互作用解析を行い、SePと受容体の詳細な結合様式を解明する。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属研究機関変更に伴い、新たな機器を導入する必要が生じたが、設置場所等の兼ね合いにより本年度のうちには導入ができなかった。そこで、来年度分として請求した助成金と合わせ、本研究の遂行に必要な機器等を導入するために使用する計画である。
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Research Products
(3 results)