2017 Fiscal Year Research-status Report
ADAM10を治療標的とする統合失調症の発症予防・遅延医療技術の創出
Project/Area Number |
17K10293
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
三河 須美子 浜松医科大学, 医学部, 助教 (70359743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植木 孝俊 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (60317328)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 統合失調症 / ミクログリア / NMRプローブ / MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠中期の母体へのpoly I:C投与により、5~6週齢に遅発性の脳内ミクログリア活性化に続いて精神神経症状を来す統合失調症病態モデルマウスの作製を試みた。 ① 可溶性FKNの産生による脳内ミクログリア活性化のMRI解析技術の創出 caspase-3/7などの病態プロテアーゼの酵素活性を、培養生細胞にてNMRを用い定量解析することができるIn-cell NMR技術はこれまでに確立済であるので、ここでは当該技術を病態脳におけるADAM10の活性化による可溶性FKNの産生の画像化に応用する。初めに、ADAM10の賦活によりNMRシグナルを生じるNMRスイッチング・プローブを作出した。行動学的解析でPPI低下などの精神神経症状を確認した統合失調症病態モデルマウスより調製した脳細胞初代培養系(ニューロン・グリア混合培養系)にプローブを添加し、NMRでADAM10活性依存的なNMRシグナルの生起を定量解析した。 次に、創製したNMRスイッチング・プローブに狂犬病ウィルス糖タンパク質(RVG)を結合することにより血液脳関門透過性を持たせた。それを統合失調症病態モデルマウスに末梢投与することによって、発症初段階で脳内ミクログリア活性化に先行し生起する分子異常であるADAM10の賦活と可溶性FKNの産生を、MRIでリアルタイムに画像化した。 ② MRIによる統合失調症発症初段階の脳病変解析 MRIによるADAM10活性の脳内動態の画像化の後、病態モデルマウスに[11C]PK11195を末梢投与し、PETで脳内の活性化ミクログリア動態を併せ描出した。現在、ADAM10の病的賦活とそれに続く可溶性FKNの産生がミクログリア活性化を伴う脳内炎症反応を惹起していることを確認中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究途中で交通事故に遭い、しばらく休養せざるを得なかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
MRIによる統合失調症発症初段階の脳病変解析を終えた後、 統合失調症患者で思春期以降に遅発性のミクログリア活性化が生起する分子異常を、病態モデルマウスにてMRIによりリアルタイムで脳内ADAM10活性動態を描出しながら解析する。すなわち、MRIで可溶性FKNの産生に掛かるADAM10の賦活を探知したマウスより急性脳スライスを調製した後、MRIシグナルを生じる脳領野スライスからレーザーマイクロダイセクション法(LMD法)でニューロン、アストロサイト、ミクログリアを採取する。そしてそれら細胞のmRNAを抽出し、DNAマイクロアレイで遺伝子発現の網羅的解析を行う。 ADAM10と可溶性FKNの受容体CX3CR1について、その機能調節を担う脳内分子を探索するとともに、その機能病変の分子病理を解明する。申請者らは、これまでに脳内ではアストロサイトがADAM10を発現することを見出している。一方、ミクログリアに発現するCX3CR1は、可溶性FKNの結合で神経毒性に、ニューロン膜結合型FKNの結合で神経保護性に機能するが、その機能制御障害の分子病理は不明である。本研究では、前述のDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析結果に照らし、アストロサイトにおけるADAM10発現調節系、及び、CX3CR1と共役しミクログリアの活性化を制御する細胞内情報伝達系を探索する。 また、ミクログリア活性化を惹起するITAM-Syk情報伝達系は、TREM2やSIRPβ1などの受容体様タンパク質の活性化に続き賦活するが、それら受容体の機能調節に作働する内因性結合分子は未同定であるので、病態モデルマウスにてプロテオーム解析により可溶性FKN、CX3CR1、ITAM-Syk情報伝達系、TREM2、SIRPβ1などの連関を検討する。
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Causes of Carryover |
交通事故による怪我のため、実験の進み具合がやや遅れたため。 本年度はその分の遅れを取り戻し、当初の実験計画に軌道を戻せるようにする。
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