2021 Fiscal Year Research-status Report
乳癌の乳管内進展に関する画像評価と分子生物学的切除断端マーカー開発に向けた研究
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17K10565
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
蒔田 益次郎 日本医科大学, 医学部, 教授 (10229338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
軸薗 智雄 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 客員研究員 (10465312)
石川 朋子 お茶の水女子大学, ヒューマンライフイノベーション研究所, 特任准教授 (70212850)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳癌 / 広がり診断 / 造影超音波 / 細胞診 / マイクロRNA / 部分切除 / 切除範囲 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
乳癌の乳腺部分切除にあたり、造影超音波を導入することによって、正確な術前の広がり診断と切除範囲をガイドする水系エマルジョン樹脂塗料による模型作成と切除法を考案した。この一連の方法を「マスキングカラーシミュレーション」として報告し、断端を陰性にする因子についても報告した。さらに、保険診療でどの施設でも行えるように、ハイドロゲルフィルム剤の使用を超音波検査用のハイドロジェルパッドに変更して普及できる方法として報告した。断端陰性の症例にはサブタイプを考慮して照射を省略する研究も行っている。 生物学的断端マーカーの探索については、非浸潤性乳管癌症例3例のペアサンプルの細胞診検体から抽出されたマイクロRNAを用いて定量的RT-PCR法によるアレイ解析を行った。その結果、癌部と非癌部で発現の強度が有意に異なるトランスクリプトが2000種類あまりリストアップされ、その上位には乳癌に関連するものも含まれていた。これらの中には分子生物学的切除断端マーカーとなりうる物質が含まれていると考えられた。乳管内進展に関わる分子生物学的マーカーは乳管内に高濃度に存在すると考えられ、異常乳頭分泌症例に対する日常的な検査である乳管内視鏡に注目した。異常乳頭分泌のある症例には良性の乳管内乳頭腫と主に乳管内進展をする乳癌が悪性の疾患である。われわれは37例の異常乳頭分泌症例に乳管内視鏡施行時に、乳管内洗浄で得られた細胞の一部を用いてRNAの分析を行った。前述の研究で乳管内進展に関連すると思われたRNAであるCARTPTとBRCAT54を乳管内からのサンプルで検討した。RNAの質と量の観点から検討可能と思われた乳癌症例4例と良性(乳管内乳頭腫)2例で測定したところいずれも検出することができた。乳管内からのサンプルでRNAを評価することが可能と思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究の目的は乳癌の乳腺部分切除において、局所再発を減らすために、取り残しを極力減らす切除法の開発と普及と、取り残しの正確な評価としての断端の分子生物学的マーカーの確立であった。切除法については、研究開始当初は造影超音波画像の3D化も想定したが、実際には造影超音波による候補病変(低エコー域)の数は限られ、造影効果を候補病変ごとに見るという診断法で問題なく、3D化は不要と判断した。超音波検査用のハイドロジェルパッドの導入で、より普及しやすい方法として水系エマルジョン樹脂塗料による模型作成が「マスキングカラーシミュレーション」として確立した。 分子生物学的マーカーの探索については、研究当初は造影超音波で造影される病変の穿刺吸引細胞診材料を用いて癌と非癌の対比を考えていたが、乳管内進展のマーカーということで、当院で日常的に行われている乳管内視鏡の際に乳管内から採取できるサンプルを用いることに方針を転換させた。その結果、乳管内視鏡の際に採取される細胞検体でマイクロRNAが評価可能であり、いくつかのマーカーの候補を挙げるに至った。しかし、候補マイクロRNAのValidation Studyへ入ることができず、今後の課題として残された。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究は今年度で終了となるため、切除法に関しては切除断端陰性例への乳房照射の省略へと進めていく。すでに症例を蓄積しており、中間解析を行う予定である。切除断端の分子生物学的マーカーについてはさらに候補マイクロRNAについて吟味し、Validation Studyを加えていく予定であったが、新たな研究を立ち上げて遂行していきたいと考える。
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Causes of Carryover |
研究成果の報告のための費用を想定していたため、使用できなかった金額が生じました。期間を延長して残額を使用する予定です。
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Research Products
(3 results)