2017 Fiscal Year Research-status Report
頭蓋内胚細胞腫瘍に特異的な遺伝子変異の機能解析と新規分子標的治療の開発
Project/Area Number |
17K10882
|
Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
富山 新太 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 脳神経外科, 講師 (40385810)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 直樹 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 脳神経外科, 講師 (20573637)
山本 祐太朗 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 脳神経外科, 助教 (20785761)
森 健太郎 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 脳神経外科学, 教授 (30200364)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 中枢性胚細胞腫 / c-KIT変異 / ジャーミノーマ / NGGCT / 分子シグナル / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
頭蓋内胚細胞腫瘍(iGCT)は全世界の中でも本邦で特に多く発症することが知られているが、その発症頻度の低さも相まって、その発癌や悪性化に関わる遺伝子変異や分子メカニズムに関しては今まで殆ど明らかにされていなかった。近年、我々、防衛医大と国立がん研究センターの共同研究チームは、iGCT consortiumで日本全国から集められたiGCT症例の網羅的遺伝子解析によりiGCTに特徴的な遺伝子変異を複数見出し、それらの一部が活性型変異(癌原遺伝子)あることを突き止め報告を行ってきた。今回我々は、これまで我々が見出してきたiGCT遺伝子変異の機能解析を行い、iGCTに対する新規分子標的治療法を開発すべく検討を開始した。初年度(2017年)としては、iGCT consortium症例の網羅的な遺伝子解析により得られた高悪性度iGCTである非ジャーミノーマ胚細胞腫群(NGGCT)で高頻度に変異を認める分子を同定し、我々が樹立したNGGCT細胞株での、その変異の意義を探っている。また、低悪性度iGCTであるジャーミノーマで高頻度に認められるKIT遺伝子変異の、ジャーミノーマの悪性化ならびに治療抵抗性獲得における意義について検討を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はまず、その後iGCT consortiumに更に集められた症例サンプルの次世代シークエンサーを用いた網羅的な変異解析を行った。その結果、iGCTの亜系のなかでも高悪性度であり今迄ドライバー変異が明らかになっておらず有効な治療法が未だ存在しない非ジャーミノーマ胚細胞腫群(NGGCT)で高頻度に変異を身認める分子を同定した。この分子は蛋白(分子)分解を制御する分子であることが知られており、腫瘍細胞での働きとしては、腫瘍原性になるとも抗腫瘍的になるとも報告されている。そこで、我々が世界に先駆けて患者検体より樹立したヒトNCGGT(卵黄嚢腫瘍)培養細胞株(YST1細胞)に対し、この分子の過剰発現ないしはノックダウン/ノックアウトを行い、現在、細胞増殖、細胞浸潤、細胞死誘導、そして腫瘍形成能等に対してどの様な影響があるかを調べている。また、我々は以前の報告で膜型チロシンキナーゼであるKIT遺伝子の活性型点変異(exon11, exon17)が低悪性度iGCTであるジャーミノーマのドライバー変異である可能性を指摘してきたが、実際にKIT遺伝子の変異がiGCTの腫瘍原性をどのように制御しているかは未だ明らかになっていなかった。また、ジャーミノーマは時として治療抵抗性を呈することも知られていることから、我々はKIT遺伝子変異によるジャーミノーマの治療抵抗性獲得の可能性を考慮し、KIT遺伝子変異を低悪性度GCT細胞株であるTcam2細胞に対して過剰発現もしくはCRISPRシステムを用いた導入を行い、KIT遺伝子変異によるジャーミノーマの腫瘍原性の制御や治療抵抗性獲得のメカニズムを探索すべく、実験システムの構築を現在行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
YST1細胞への前述の候補分子の過剰発現やノックダウン/ノックアウトにより、その候補分子のYST1細胞における機能解析をすすめ、その候補分子や、その候補分子に関連した分子シグナルがYST1細胞に対する治療標的となり得るかどうか検討を行う。また、更に患者検体よりの新規ヒトNGGCT培養細胞株の樹立も並行して行い、樹立出来た場合は、その樹立細胞にてYST1細胞と同じく候補分子の機能解析を進め、この候補分子のNGGCTに対する治療標的としての意義を更に深めるべく検討していく予定である。ジャーミノーマにおけるKIT遺伝子の変異については、野生型KIT遺伝子とともにTcam2への変異導入を行った後に、それぞれの変異導入株の腫瘍原性ならびに分子シグナルの変化を野生型KIT導入株と比較し、野生型KIT導入細胞株より変異型KIT導入細胞株で顕著に認められる腫瘍細胞の悪性性化形質や活性化の上昇が認められる分子や分子シグナルの同定を行い、それらをターゲットとした治療モデルを、in vitroないしは動物モデルにて確立していく予定である。
|