2017 Fiscal Year Research-status Report
ユーイング肉腫特異的融合遺伝子タイプによるマイクロRNA発現制御機構に関する解析
Project/Area Number |
17K10971
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
河野 正典 大分大学, 医学部, 助教 (30571773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田仲 和宏 大分大学, 医学部, 准教授 (10274458)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ユーイング肉腫 / マイクロRNA / 融合遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は本研究において、Ewing肉腫の特異的融合遺伝子産物EWS-Fli1が、そのsubtypeによってmicroRNA (miRNA)及び標的mRNA発現にどのような影響を与えているかを解明する。切断点の異なるEWS-Fli1 type 1及びtype 2を、各々に特異的なsiRNAによりknock downした後に、有意な発現変化を示すmiRNAとその標的mRNAを網羅的に解析することで、1)Ewing肉腫の性質を普遍的に規定する因子、2)予後不良のtype 2に特有な予後規定因子、3)より選択的な治療標的となる因子、を同定する。今回、EWS-Fli1の融合タイプ別にその支配下にあるmiRNAおよびmRNA遺伝子群を明らかにし、融合タイプによらずEwing肉腫全体に普遍的な影響を及ぼす因子と、融合タイプによって異なる発現をしている因子を抽出し、その生物学的意義を検証する。本研究によりEwing肉腫の発がん機構の解明のみならず、EWS-Fli1 type別の予後規定因子が同定でき、バイオマーカーと個別化医療の開発にも繋がると期待される。これらの融合subtypeによりEwing肉腫の予後が異なり、特にtype 2 EWS-Fli1を持つ患者は予後不良と報告されている。しかし、融合遺伝子のsubtypeによって予後に差を生じる機構は全く不明である。そこで本研究では、EWS-Fli1 type 1およびtype 2をそれぞれ特異的に阻害するsiRNAを導入し、miRNAの発現変化を網羅的に解析、各EWS-Fli1 subtypeの特異的な標的miRNAおよびその下流の標的遺伝子mRNAを同定する。EWS-Fli1に制御されEwing肉腫のがん化に寄与する因子、type 2の予後を悪化させる特異的な因子を同定、それらの生物学的意義を検証することを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EWS-Fli1 type 1およびtype 2をそれぞれ特異的に阻害するsiRNAを導入し、miRNAの発現変化を網羅的に解析、各EWS-Fli1 subtypeの特異的な標的miRNAおよびその下流の標的遺伝子mRNAを同定した。すでに我々は次のような予備的な研究結果を得ている。 ① Ewing肉腫細胞株4種(SKNMC, WE68, SKES1, RDES)のmiRNAと下流の mRNA発現をmicroarray 法(GeneChip miRNA 3.0 arrayおよびGeneChip Genome HG U133 Plus 2.0 array, Affymetrix ) にて網羅的に解析した。 ② ①のEwing肉腫細胞株に対し、EWS-Fli1 type 1(SKNMC, WE68)とtype 2 (SKES1, RDES) に特異的なsiRNA(siEFBP1およびsiEFBP2)を作成、それぞれを導入後、EWS-Fli1 type 1およびtype 2の発現が特異的にknock downできていることを、定量的PCRおよびウェスタンブロットにて確認した。これらの細胞を用い①と同様の網羅的解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果をもとに、本研究ではEwing肉腫をEWS-Fli1融合遺伝子のsubtypeでの生物学的差異に着目、type specificなEWS-Fli1 knock downによるmiRNAおよびmRNAの発現変化を網羅的に解析し、subtype別にEWS-Fli1がmiRNA発現を制御するメカニズムの解明と臨床応用に展開するための基礎となる研究を行う。具体的には研究期間内に以下のことを明らかにする。 1) Ewing肉腫細胞の異なるEWS-Fli1 subtype間で共通に発現上昇または低下するmiRNA, mRNAを抽出する。同時にtype間で発現上昇もしくは低下が一致しない遺伝子も抽出する。 2)1)のうち、とくに予後不良といわれるtype 2で特有に発現が変動している因子を同定する。それらの因子の発現異常を補正するmiRNA mimic あるいはinhibitor oligoを細胞株に導入することで細胞周期の停止、apoptosis抵抗性の減弱、in vivoでの腫瘍増殖能の低下、などの形質の変化として認められるかを観察する。
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Causes of Carryover |
[次年度使用が生じた理由と使用計画] 申請時点では至適抗体濃度の同定に濃度依存性試験、時間依存性試験に多くの試薬を使用する予定であったが予備実験の段階で適正試薬濃度が判明したため結果として予算が余る事になった。また動物実験に関しても同様で報告できるデータが比較的早期に取得できたため申請時の予算と解離が生じた。[使用計画] 予定していた動物モデルの数を増やすことでデータの信用性を高めるとともに再現性の得られるデータを得るための手法に改良を重ねていく。
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Research Products
(3 results)