2018 Fiscal Year Research-status Report
人工股関節置換術後の骨溶解を制御する新規治療法の開発
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17K10993
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
テルカウィ アラー 北海道大学, 医学研究院, 助教 (00723074)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マクロファージ / 炎症性骨溶解 / 破骨細胞 / IL-27 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージが摩耗粉と最初に反応し骨吸収反応を惹起することを踏まえ、我々はビタミンE添加超高分子量ポリエチレン(以下、ビタミンE添加UHMWPE)と共培養したマクロファージの網羅的遺伝子解析をRNAシークエンスを用いることにより行った。さらにビタミンEを添加しない従来のUHMWPEと共培養したマクロファージの網羅的遺伝子解析も行うことで、これらの比較を行った。ビタミンE添加UHMWPEと従来のUHMWPEとを添加したマクロファージでは、その反応や放出因子が異なると考えられる。従って、これらの条件の違う網羅的遺伝子解析の比較により、骨吸収性疾患に対する新規治療薬開発に繋がる因子の同定が出来ると考えている。我々はUHMWPEで刺激したマクロファージの遺伝子発現はビタミンE添加の有無により異なることを網羅的遺伝子解析により明らかにした。発現の上昇した遺伝子のうち、IL-27はビタミンE添加UHMWPEで刺激されたマクロファージで著明に発現上昇を認めた。そこで、マウス頭頂骨骨吸収モデルを用いてIL-27の骨吸収抑制作用について調べた。マウス頭頂骨にIL-27を投与することで、UHMWPEにより誘発された骨吸収は減少した。またin vitroにおいて、IL-27の添加は、UHMWPEにより誘導されるマクロファージの破骨細胞への分化を抑制するとともに、炎症反応を減弱させたことを示した。これらの結果から、ビタミンE添加UHMWPEが炎症性骨吸収を抑制する機序にIL-27が関与していることを示した。この一連の研究結果は、人工関節をはじめとする体内インプラントのバイオマテリアルの開発や、ポリエチレン摩耗粉が引き起こす炎症性骨溶解に対する新規治療薬の開発につながるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度、我々は炎症性骨溶解に対する治療薬開発のため、ビタミンE添加UHMWPE粒子の炎症性骨溶解を減弱させる分子メカニズムの解明に着手した。マクロファージがポリエチレン摩耗粉により活性化し炎症性骨溶解を惹起するが、我々はその機序を制御する新規因子としてIL-27を同定した。ポリエチレン摩耗粉が誘導する炎症性骨溶解において、IL-27が炎症性骨溶解を抑制する分子機序について、In vivoおよびIn vitroにおいて研究を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症性骨溶解や無菌性ゆるみにRANKL非依存的メカニズムが関与しているという本研究の知見に基づき、我々は骨溶解ならびに無菌性ゆるみの機序を明らかにすべく他の候補因子のスクリーニングを継続して行い、同定された新たな候補分子が破骨細胞の分化ならびに骨吸収を誘導する詳細な分子メカニズムについて研究を行う予定である。また、炎症性骨溶解の病態に対する好中球の機能解析も行う予定である。
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Causes of Carryover |
納期に時間を要することが判明した発注品があり年度をまたぐため発注をキャンセルしたため
関連研究の消耗品を購入予定
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