2018 Fiscal Year Research-status Report
骨盤内臓器神経クロストークの病態解明と難治性骨盤痛症候群における新規治療法の開発
Project/Area Number |
17K11172
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川守田 直樹 東北大学, 大学病院, 助教 (00617524)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 慎一 東北大学, 大学病院, 講師 (10622425)
海法 康裕 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (30447130)
荒井 陽一 東北大学, 医学系研究科, 客員教授 (50193058)
佐藤 琢磨 東北大学, 大学病院, 助教 (80804856)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 骨盤内蔵神経クロストーク / 慢性骨盤痛症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性骨盤痛症候群・膀胱痛症候群は膀胱に炎症所見がないにも関わらず、同部に痛みや頻尿等の排尿症状を呈する難治性疾患である。この病態はいまだ不明な部分が多いが、骨盤の臓器に炎症が生じると、他の炎症を認めない骨盤臓器についても、疼痛などの関連症状を引き起こす「骨盤内臓器神経クロストーク」の関連が示唆されている。この病態解明のため、子宮内膜症モデルラットを作成し、炎症の無い膀胱の疼痛や過活動症状が引き起されるか、そのメディエーターとしてどのような神経伝達物質が関与しているか研究を行った。 病態モデルはSDラットの双角子宮の片方を切除し内膜面を腸間膜に2か所縫い付けることで作成した。昨年度は、このモデルを利用して、膀胱内圧測定を行い、膀胱過活動が起こる傾向を確認した。また、膀胱内に刺激物質であるレシニフィラトキシンを注入し、膀胱の痛みを示す行動であるフリージングを多く示すことを認めた。 今年度は、この病態モデルから得られた膀胱粘膜と尿の検体を用いて、骨盤内蔵神経クロストークのケミカルメディエーターを同定するため、強発現しているmRNAやタンパクの探求を行った。以前我々は、腸炎により引き起こされる膀胱痛に関連する神経伝達物質として、神経成長因子(NGF)が異常増殖することを報告しており、また、子宮内膜症患者の腹水中にレプチンが異常上昇していることの報告から、これらの物質をケミカルメディエーターと想定し、ターゲットを定め検討したが、今回の検討では何れもの有意な上昇は認めなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の計画では、確立された病態モデルをの試料を用い、ターゲットとなるケミカルメディエーターを同定し、その治療モデルへの研究へ移行予定であった。しかしながら、現時点では病態モデルで、膀胱内圧測定では膀胱過活動を認めること、痛み行動実験では、膀胱知覚神経Cファイバーの刺激物質である、レシニフィラトキシンで有意に強い疼痛行動を示すことを確認したところまでにとどまっている。 我々はこれまで、結腸と膀胱の骨盤内蔵神経クロストークに関連するメディエーターとしてNGFを報告した。今回、子宮内膜症と膀胱の骨盤内蔵神経クロストークにおいては、NGFは有意な上昇がみられず、別の神経伝達物質が関連する可能性を示唆している。そのためさらなる探求が必要な状態となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
子宮内膜症と膀胱痛に関連する、骨盤内蔵神経クロストークに関連するケミカルメディエーターを、子宮内膜症で上昇が報告されている他の神経伝達物質に拡大して探求する。 これまでの子宮内膜症ラットモデルを修正し、双角子宮の切片の内膜を、2か所腸間膜に縫合することに加えて、腹壁と膀胱壁付近にも追加で植え付けたモデルを作成し、膀胱内圧測定、痛み行動、膀胱粘膜・尿中の神経伝達物質の変化について検証する。
|
Causes of Carryover |
ラット病態モデルを用いての生理実験と、その組織を用いての分子生物学的解析の消耗品購入において予定より安く購入し物品もあり、4780円の差額が生じた。これについては、次年度の試薬当の消耗品購入に充てる予定としたい。
|