2018 Fiscal Year Research-status Report
黄体形成ホルモンの尿道機能への作用機序の解明と新規治療薬の開発
Project/Area Number |
17K11173
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
海法 康裕 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (30447130)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川守田 直樹 東北大学, 大学病院, 助教 (00617524)
荒井 陽一 東北大学, 医学系研究科, 客員教授 (50193058)
中川 晴夫 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (80333574)
泉 秀明 東北大学, 医学系研究科, 助教 (80722545)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 腹圧性尿失禁 / 黄体形成ホルモン / 女性ホルモン / 尿道括約筋 / 尿禁制反射 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的は、長らく女性腹圧性尿失禁の原因として注目されていた閉経によるエストロゲン減少そのものは尿失禁に直接関係がなく、エストロゲン減少のフィードバックによって上昇するLHが尿禁制の悪化に影響する因子であるとの仮説を検証することである。初年度はLH上昇による尿道括約筋機能への影響とGnRH antagonist投与による尿道括約筋機能の変化について研究をおこなっている。メスSDラットを用いて卵巣摘除(OVX)によりLHが上昇することを確認のうえ、病態モデル(OVX群)、治療モデル(卵巣摘除後にGnRH antagonistを投与しLHを低下させた状態のラット:OVX+G群)、コントロール2群(開腹のみ、開腹+GnRH antagonist投与)の4群のモデルを作成し、ホルモン状態の安定する6週後に尿道機能の評価としてくしゃみ誘発尿禁制反射実験を行った。パラメーターとして、ラットのくしゃみ時に尿禁制のために誘発される尿道括約筋収縮の波形から振幅(A-URS)と尿道基線圧(UBP)を評価した。6週後のUBPは、OVX群ではSham群と比べ有意な低下を認めた一方で、OVX+G群ではOVX群と比べてUBPの有意な上昇を認めた。6週後のA-URSは、OVX群ではSham群に比べて有意な低下を認めた一方で、OVX群とOVX+G群間には有意な差はなかった。上記の仮説をラット生理実験において実証できたと考えられるが、一方で、LH低下はA-URSを変化させなかったことは当初の予測とは異なる結果であった。印象として有意差はないもののA-RUSへの影響が完全に否定できていなかったため平成30年度に、ことなる種類のGnRHアンタゴニストを用いて追加実験を行ったところ、UBPには変化がなかったが、AURSは有意にOVX群で低下し、少ないながらOVX+G群で有意な改善を認めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の課題であった1. LH上昇による尿道括約筋機能への影響、2. GnRH antagonist投与による尿道括約筋機能の変化を評価するラット生理実験において、当初は、LH上昇による尿失禁悪化のメカニズムとして尿道括約筋活動を反映するA-URSと尿道平滑筋活動を反映するUBPの両者の減弱を予想していたが、結果が予想とは違い、尿道平滑筋活動を反映するUBPのみで減弱が認められたため、別の種類のGnRH antagonistを用いて追加実験をした。結果はGnRH antagonist投与によって尿道括約筋活動を反映するA-URSは有意差をもって回復することが判明している。理由として、投与回数と血中濃度が考えられ、これから採取した組織、血液で理由の裏付けが必要であるが、A-URSとUBPの減弱・回復を確認できたことで、LH上昇が尿道括約筋機能を低下させる、すなわち、尿失禁の増悪させるといった仮説は間違っていないと判断され、最終年の実験につながるものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
UBPが通常の尿道内圧を示すパラメーターである一方、A-URSは急激な腹圧上昇に反射的に対応する尿道内圧上昇であり、いずれも腹圧性尿失禁における独立した重要なパラメーターと考えており、これまで得られた生理実験の結果(本年度の追加実験の結果)から、UBPおよびQ-RUSともに減弱するといった結果がでたことで、LHが尿禁制の悪化に影響する因子であるとの仮説は証明されたと考える。しかしながら、私用するGnRH antagonistの種類によって反応パラメーターに差があることが今回新たに明らかになった。現段階でははっきりした理由は断定できず、理由の究明が必要である。原因として、ラット数の問題、卵巣摘除から実験までの期間の影響などが考えられるが、使用したGnRH antagonistは初めのものは徐放剤であるのに対して、昨年使用したものは半減期より3日に1回の投与であったなどの違いがあることも究明の糸口になると考えている。新しいGnRH antagonistに関しては組織の採取や保存は初めから行わなければいけないが、組織学的・分子生物学的な検討、すなわち、1)qPCR法によるLH受容体のmRNA発現量の比較検証、2)ウェスタンブロットによるLH受容体タンパクの比較検討、3)組織染色・免疫染色による括約筋筋肉量の比較検討、4)蛍光免疫染色によるLH受容体の局在の比較検討、5)LH上昇による尿道括約筋における下流カスケードの検索を予定通り順次着手し、生理実験の結果の裏付けをとっていく予定である。
|
Causes of Carryover |
実験途中で、GnRH antagonistを用いた追加実験が必要となったため、予定していた組織学的・分子生物学的な検討が遅れたため、実験補佐を雇わず、研究補助のための人件費がかからなかった。当年度の動物実験およびデーター解析はすべて自分たちでおこなったため、次年度使用額が生じた。次年度は最終年度なので雇用を行う予定である
|