2018 Fiscal Year Research-status Report
口腔内細菌による眼底出血誘発の可能性とそのメカニズム
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17K11424
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
原 克典 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (00609323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大平 明弘 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 客員研究員 (00169054)
臼田 春樹 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (30707667)
和田 孝一郎 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (90263467)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 口腔内細菌 / 眼底出血 / 糖尿病網膜症 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な要因による眼底出血患者54名(A群)と眼底出血のないもの53名(B群)の唾液を採取し,PCR法で歯周病菌(P.g),Streptococcus mutans(S.m)を認めるかどうか判定した。更にP.gのうち特に病原性が強いと言われるfimⅡ型の線毛を有するもの(fimⅡ)と,S.mのうち出血性の全身疾患に関わるcnm遺伝子を有するもの(cnm)であるかどうかも同時に判定した。 A群の眼底出血の原因疾患は,糖尿病網膜症が28名,網膜静脈閉塞症16名,乳頭出血5名,加齢黄斑変性症3名,その他2名であった。B群は,白内障患者(眼底疾患なし)23名,白内障・緑内障患者16名,糖尿病患者4名,健常成人10名であった。 P.g,fimⅡ,S.m,cnmが陽性となった人数は,A群ではそれぞれ37名, 7名, 44名, 14名,B群ではそれぞれ40名,2名,42名,8名であった。P.gおよびS.m陽性となったものは両群とも大きな差はなかったが,fimⅡ陽性P.gはA群で7名,B群で2名,cmn陽性S.mはA群で14名,B群で8名と差がつく傾向を認めた。特に糖尿病網膜症の病期が進むにつれfimⅡ陽性,cnm陽性患者が多くなる傾向を認めた。 次世代シークエンサー解析を用い,107名の唾液中の口腔内細菌の占有率を調査した。上位10位を占めた細菌は, Streptococcus, Veillonella, Neisseria, Fusobacterium, Mannheimia, Bacteroides, Cellulomonas, Gemella, Porphyromonas, Prevotellaであった。網膜出血,硝子体出血の有り無しの等の条件で細菌の占有率に差がでるか検定を行ったが有意な差を認めず,シークエンサー解析で眼底出血に関連のある新たな口腔内細菌の推定はできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は「口腔内細菌と眼底出血を引き起こす可能性についての研究」と題し,島根大学の医の倫理委員会での承認を得て行っていた臨床研究であったが,この臨床研究期限が2018.6月までとなっており,再度新たな承認を得る手続きを必要とした。そのため,H30年度に行う予定であった糖尿網膜症患者でのサンプル採取が行えなかった。2019.2月に新たな承認を得ることができたため,H31年度(最終年度)で,3群に分けた糖尿病患者および対照群それぞれ20名,計80名の唾液サンプル採取と解析を行う予定である。2-3ヶ月程度でサンプル採取は終了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果をふまえ,糖尿病患者を3つの病期(網膜症なし群,単純網膜症群,増殖網膜症群)にわけ,それぞれ20名ずつ選定し,唾液採取し,主に歯周病菌とS.mutans菌にターゲットを絞ってPCRで確認する。歯周病菌では,特に線毛のタイプにおいてもどのタイプに属するかまで確認する。S.mutans菌においてはcnm遺伝子を有するかどうか判定する。交絡因子について考慮し,口腔内細菌が糖尿病網膜症の進展に関与している可能性があるかどうかについて検討を行っていく。コントロール群として糖尿病のない年齢が同程度の白内障患者さん20名の唾液サンプルを採取し,比較を行う。
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Causes of Carryover |
H30年度は,物品費・旅費を含めた経費使用が当初予定より少なかった。理由としてH30年度に行う予定であった糖尿網膜症患者でのサンプル採取・解析が,新たな臨床研究承認を得るまで,行えなかった為である。H31年度には,H30年度に行う予定であったサンプル採取・解析に加え,海外での研究発表や情報収集のための研修を行うため,旅費等が大幅に増える予定である。
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