2018 Fiscal Year Research-status Report
The inhibition of subretinal fibrosis by specific retinoic receptor ligands
Project/Area Number |
17K11451
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
木村 和博 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60335255)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 直之 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (70437630)
寺西 慎一郎 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (90649360)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 滲出型加齢黄斑変性 / レチノイン酸 / 網膜下線維性瘢痕 |
Outline of Annual Research Achievements |
滲出型加齢黄斑変性は、網脈絡膜に存在する新生血管とそれに伴う増殖性変化がその疾患の本態であると考えられる。新生血管の退縮については抗VEGF剤の硝子体投与により治療効果をある程度得られるようになってきた。一方、重症や再発例では抗VEGF剤投与でも十分な効果が得られないことも多い。特に、晩期に形成される網膜下の線維性瘢痕組織が視機能低下の一因をなす。現在、滲出型加齢黄斑変性の治療において、晩期合併症のひとつである網膜下の線維性瘢痕組織への特異的な治療法が存在しない。本研究では、網膜色素上皮細胞を基点とした網膜下線維性瘢痕の形成、網膜組織破壊の病態解明を行い、レチノイン酸受容体およびその特異的なリガンドによる線維性瘢痕の形成における役割を明らかにすることを目的とする。これまで、線維化の中心的な役割を果たすTGF-β2による網膜色素上皮細胞の細胞収縮、上皮間葉系移行に対して、レチノイン酸受容体アゴニストの中でRAR-α、γアゴニストに抑制作用があることをこれまで明らかにしてきた。RAR-αアゴニストは、in vivoの脈絡膜新生血管形成モデルマウスにて新生血管の発生は抑制しないことが、一方でRAR-γアゴニストはその発生を抑制し、新生血管発生に対する各受容体が異なる作用を果たすことが明らかになった。さらに、網膜色素上皮細胞においてTGF-β2存在下でRAR-γアゴニスト処理の有無による発現分子の変動をmRNAシークエンスおよびRT-PCRをベースとしたSAGEにて解析した。種々の分子の発現量が変動していたが、中でも滲出型加齢黄斑変性の発症、進行に関与している補体分子の発現をRAR-γアゴニストが有意に抑制していることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
滲出型加齢黄斑変性は、網脈絡膜に存在する新生血管が病態に大きな影響をきたす。近年抗VEGF薬の登場にて、新生血管への退縮効果を得られるようになってきた。一方で、晩期に二次的に形成された網膜下の線維性瘢痕組織が視力予後に多大な影響をもたらす。この網膜下に形成される線維性瘢痕組織への特異的な治療法が存在しない。本研究では、これまでの研究でレチノイン酸受容体アゴニストRAR-α、γアゴニストがin vitroで網膜色素上皮細胞を基点としたTGF-β2による網膜色素上皮細胞の細胞収縮、上皮間葉系移行を抑制することを明らかにした。結果としては、RAR-α、γアゴニストに網膜色素上皮細胞の細胞収縮の抑制、細胞外基質の分解酵素のMMPsの発現抑制、細胞外基質との接着に寄与する接着斑構成分子のパキシリンのリン酸化を抑制することを明らかにした。また、両RAR-α、γアゴニストは、網膜下瘢痕形成モデルマウスで、瘢痕形成を抑制した。さらに、RAR-αアゴニストは、in vivoの脈絡膜新生血管形成モデルマウスにて新生血管の発生は抑制しない、一方でRAR-γアゴニストはその発生を抑制することを明らかにした。これらの結果から、RAR-α、γアゴニストは、作用の程度差はあるにしても、ともに網膜下瘢痕形成を抑制する一方で、脈絡膜新生血管抑制に関しては異なる作用を発揮することが明らかになった。 続いて、培養網膜色素上皮細胞においてTGF-β2存在下でRAR-γアゴニスト処理の有無による発現分子の変動をmRNAシークエンスおよびRT-PCRをベースとしたSAGEにて解析した。種々の分子の発現量が変動していたが、中でも滲出型加齢黄斑変性の発症、進行に関与している補体分子の発現をRAR-γアゴニストが有意に抑制していることが明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
両RAR-α、γアゴニストは、網膜下瘢痕形成モデルマウスで、瘢痕形成を抑制した。さらに、RAR-αアゴニストは、in vivoの脈絡膜新生血管形成モデルマウスにて新生血管の発生は抑制しない、一方でRAR-γアゴニストはその発生を抑制することを明らかにした。これらの結果から、RAR-α、γアゴニストは、作用の程度差はあるにしても、ともに網膜下瘢痕形成を抑制する一方で、脈絡膜新生血管抑制に関しては異なる作用を発揮することが明らかになった。今後は、脈絡膜新生血管と網膜下瘢痕形成へのこらの受容体および下流のシグナル等について検討していく必要がある。 続いて、培養網膜色素上皮細胞においてTGF-β2存在下でRAR-γアゴニスト処理の有無による発現分子の変動をmRNAシークエンスおよびRT-PCRをベースとしたSAGEにて解析した。種々の分子の発現量が変動していたが、中でも滲出型加齢黄斑変性の発症、進行に関与している補体分子の発現をRAR-γアゴニストが有意に抑制していることが明らかになった。同様に今後は、RAR-αアゴニスト更には、in vivoモデルからの採取した網膜組織についても同様の検討を行い、それぞれのアゴニストの作用機序や下流で働くシグナル伝達経路等についても検討していく。
|
Causes of Carryover |
本年度はこれまでの解析結果の再現実験が主であったが、次年度に新たな解析のために消耗品や試薬の購入が必要となったため
|
Research Products
(5 results)