2018 Fiscal Year Research-status Report
術後遷延性疼痛における脳内マクロファージの役割の解明
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17K11535
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
中井 國博 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 准教授 (80362705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 盾貴 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00362707)
中江 文 大阪大学, 生命機能研究科, 特任教授(常勤) (60379170) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マクロファージ / 術後遷延性疼痛 / 動物モデル / MRI / カンナビノイド受容体 / オリゴデンドロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
新規術後遷延性疼痛動物モデルは、手術侵襲により足底部分に強い炎症が引き起こされ、術後4週においても疼痛行動が遷延していることを認めた。CCR2ノックアウトマウスを用いて同様の術後遷延性疼痛動物モデルを作成し、疼痛行動を経時的に評価した。CCR2は単球の遊走およびマクロファージの活性化に関与する。CCR2ノックアウトマウスによる術後遷延性疼痛動物モデルでは術後4週においても疼痛行動が抑制されていた。術後遷延性疼痛においてマクロファージが関与していることが示唆された。また、眼窩下神経絞扼モデルにおいてカンナビノイド受容体のCB1、CB2受容体が疼痛行動に関与するかどうかの薬理学的な評価を行った。CB1受容体は中枢神経に広く分布している一方、CB2受容体は通常では末梢でのマクロファージなどの免疫細胞に限局して存在しているが神経障害に伴い脊髄など中枢神経に発現が起こるとされている。結果はCB1受容体拮抗薬とCB2受容体作動薬で疼痛行動が抑制されていた。遷延性疼痛のような病的な状況においては免疫細胞に発現するCB2受容体がより疼痛制御に関与する可能性が示された。脳内へのマクロファージ迷入を評価するMRI撮像を行った。全身の炎症を惹き起こすリポポリサッカライド投与モデルを用いて経時的に評価したところ、個体差があるものの1日目に増加し3日目には元に戻る傾向があった。その結果に合わせて新規術後遷延性疼痛動物モデルにおいて術後1日での迷入数の評価を行ったが変化は明らかでなかった。全脳でのRNAの網羅的解析を新規術後遷延性疼痛モデルで術前と術後4週において行った。その結果、オリゴデンドロサイトに関連したRNAが減少し、オリゴデンドロサイト前駆細胞に関連したRNAが増加する傾向を見出した。これは、術後4週において脳内で脱髄が生じている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規術後遷延性疼痛動物モデルにおいて、CCR2ノックアウトマウスでは術後4週においても疼痛行動が抑制されており、術後遷延性疼痛においてマクロファージが関与していることが示唆された。眼窩下神経絞扼モデルにおいて、カンナビノイド受容体のCB1、CB2受容体の疼痛行動への関与に関する薬理学的な評価を行ったところ、CB1受容体拮抗薬とCB2受容体作動薬で疼痛行動が抑制されていた。遷延性疼痛のような病的な状況においては免疫担当細胞に発現するCB2受容体がより疼痛制御に関与する可能性を見出した。このように、動物モデル評価においては当初の計画通り進展していると考えられる。脳内へのマクロファージ迷入を評価するMRI撮像に関して、リポポリサッカライド投与モデルを用いて経時的に評価したところ、個体差があるものの1日目に増加し3日目には元に戻る傾向があり、新規術後遷延性疼痛動物モデルにおいて術後1日での迷入数の評価を行ったが、変化は明らかでなかった。炎症による脳内へのマクロファージの迷入は当初の想定より早く術後1日以内に起きていることが推定され術直後での評価を追加で行う必要が生じた。全脳でのRNAの網羅的解析では、新規術後遷延性疼痛モデルについて術前と術後4週で評価を行ったところ、オリゴデンドロサイトに関連したRNAが減少し、オリゴデンドロサイト前駆細胞に関連するに関連したRNAが増加する傾向を見出した。これは、術後4週において脳内で脱髄が生じている可能性がある事が示唆された。RNAの網羅的解析において当初の計画通り進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
MRI画像による脳内のイメージング解析に関しては、全身の炎症を惹き起こすリポポリサッカライド投与モデルおよび新規術後遷延性疼痛動物モデルにおいて術後1日以内での脳内へのマクロファージ迷入を評価していく。薬理学的解析では、新規術後遷延性疼痛動物モデルにおいてマクロファージに関係する薬剤を用いて術後早期での影響を評価する。また、RNAの網羅的解析から術後4週において脳内で脱髄が生じている可能性が示唆されているので、創が治癒した術後2週以降で再髄鞘化に関与する薬剤を投与して疼痛行動が抑制されるかを評価する。また、眼窩下神経絞扼モデルにおいては内因性カンナビノイドの関与を明らかにするために内因性カンナビノイド分解酵素阻害薬を用いて評価を行う。全脳においてのRNAの網羅的解析では、薬理学的解析の結果を参考にしながら、ノックアウトマウスを含めて急性期と慢性期でのRNA発現の評価をする。その上でより詳細なバイオインフォマティクス解析を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)MRI画像による脳内のイメージング解析に関しては、リポポリサッカライド投与モデルおよび新規術後遷延性疼痛動物モデルにおいて炎症による脳内へのマクロファージの迷入は当初の想定より早く術後1日以内に起きていることが推定されたために術直後での評価を追加で行わなければならなくなった。全脳におけるRNAの網羅的解析から術後4週において脳内で脱髄が生じている可能性が示唆された。 (使用計画)そのメカニズムを検証するために新規術後遷延性疼痛動物モデルにおいて再髄鞘化に関連する薬剤を投与して疼痛行動が抑制されるか評価する必要性が生じた。また、再髄鞘化に関連する薬理学的解析の結果に合わせてRNA発現の再評価をすることが術後遷延性疼痛のメカニズムの解明につながると考えられ、その上でより詳細なバイオインフォマティクス解析の検討を行うこととした。
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Research Products
(2 results)