2017 Fiscal Year Research-status Report
心拍揺らぎ変動解析を用いた病棟患者の病態悪化の早期認識
Project/Area Number |
17K11565
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
立石 順久 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (70375799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 孝明 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (20375794)
織田 成人 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90204205)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 急変予測 / モニタリング / 病棟急変 / RRS / HRV |
Outline of Annual Research Achievements |
院内急変患者の早期認知は重要な臨床課題であるが,従来のバイタルサイン等を元にしたスコアリングシステムでは病態変化をとらえきれない症例が存在する.一方で心拍揺らぎ変動(Heart rate variability, HRV)解析は種々の疾患における重症度の評価に有用であることが示されている.そこで,下記の三点についてデータ収集と予備解析を行った. ①心電図モニターを装着した入院患者を対象とした,蓄積された心電図波形データのHRV解析,およびその変化と急変の関連性の検討 重症患者では先行してHRVの低下が見られる可能性があることから,当院一般病棟でモニター装着中の患者における,急変事案前後の心電図波形抽出とそこから心電図RR間隔を測定し,HRV周波数解析につなげる手段を確立した.現在データ収集を続けているところである. ②HRV周波数解析による心拍からの呼吸数計測の有用性の検討 人工呼吸管理中の患者において,保存した心電図の周波数解析を行った.短時間周波数解析結果から導き出される呼吸数と人工呼吸器における実際の換気回数に高い相関が得られることを確認した. ③着ながらにして心電図計測可能な機能性衣料を病衣として用いた,病棟環境での心電図モニタリングの実用性とHRV解析の応用性の検証 使用予定であった専用衣料の開発がやや遅れていることもあり,現時点では実際の測定は行えていないが,病棟環境で用いるための通信環境の整備などを行った. 上記により病棟環境下においても心拍変動解析を用いたデータ解析が可能であることは判明した.引き続き,急変事象と収集データの関連を解析し,従来のモニタリングではとらえきれなかった所見を確認できれば院内急変患者の早期認知・介入につながることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. 急変予測におけるHRV解析の有用性の検討 これについては当初の計画通りデータ収集,解析体制の確立は概ね順調に進んでいる.具体的にはセントラルサーバーに蓄積された心電図波形を抽出しHRV解析を行う. 具体的には当施設の生体情報モニターのセントラルサーバーにアクセスしバイタルサインの数値データおよび波形データを事後的に抽出する方法,および患者毎の一連の心電図RR間隔を算出する方法を確立した.さらにHRV解析用プログラムを用いてHRVの時間領域,周波数領域,エントロピーの各種指標を算出することも進行中である. 2. HRV解析を用いた呼吸数推定の有用性の検討 HRV周波数解析の中でも特に短時間で解析できる方法を採用し測定データ中の心拍の呼吸性変動をあらわす0.15-0.40Hz付近に生じるpeakの位置を同定するプログラムを作成し,一部症例で検証した.その結果, 1分毎の平均呼吸数の算出が可能となり実測値との高い相関を確認できた. 3. 導電性機能素材を利用した病衣による病棟患者の心電図解析の実用性の検討とHRV解析の応用 使用予定であった専用衣料の開発がやや遅れていることもあり,現時点では実際の測定は行えていないが,装着上の問題点の抽出や病棟環境で用いるための通信環境の整備などを行った.
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Strategy for Future Research Activity |
1. 急変予測におけるHRV解析の有用性の検討 本年度に引き続き,モニター装着病棟入院患者の波形データを収集し,HRV解析を行い,急変予測に関するHRVの有用性を検討するための検証を行う.具体的には下記のような比較検討を予定している. 群間比較:MET要請群とMET非要請群におけるモニター装着時点のバイタルサイン及びHRV解析値でロジスティック解析を行い,HRV解析値が独立したMET要請のリスク因子となるかを検討する. 群内比較:MET要請群のMET要請時と要請前24時間までの1時間毎の各時点でバイタルサイン及びHRV解析値を比較しバイタルサイン及びHRV解析値がMET要請に先行して変化するかを確認する.また変化が見られる場合,各指標の推移の関連性を明らかにする. 2. HRV解析を用いた呼吸数推定の有用性の検討 本年度は人工呼吸中の比較的呼吸がはっきりした患者を対象として解析方法の適格性を検証した.次年度以降は実際の病棟環境において看護師記録時点の呼吸数を基準として従来のインピーダンス法とHRV周波数解析から求めた呼吸数のそれぞれの相関を求める.またインピーダンス法とHRV周波数解析の全測定記録において,Smirnov-Grubbs' testを用いて各症例毎の外れ値の割合を算出し,測定の安定性について比較することを検討している. 3. 導電性機能素材を利用した病衣による病棟患者の心電図解析の実用性の検討 開発事業者である東レから素材を購入できるようになり次第当院の病棟環境での同素材を利用した病衣の安全性をまず健常人ボランティアで確認する.その上で同意が得られた心電図モニター装着患者にモニターと併せて着用してもらい,病棟における心電図解析精度と耐久性等の使用上の問題点を検証する予定であるが,今後さらに病衣の入手が遅れる場合には代替測定手段を検討する.
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Causes of Carryover |
当初,本年度執行分として主に③の機能性衣料の材料費およびデータ解析費用を見込んでいましたが,当初使用予定であったものが企業での開発が遅れ,次年度に購入可能予定となったため,本年度は執行せず,来年度に繰り越して使用する予定としております.
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