2017 Fiscal Year Research-status Report
病院外心停止例に対する救急通信指令システムの質改善に関する研究
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17K11572
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
入澤 太郎 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (50379202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 孝 京都大学, 環境安全保健機構, 教授 (10252230)
北村 哲久 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30639810)
吉矢 和久 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (40379201)
西山 知佳 京都大学, 医学研究科, 講師 (40584842)
嶋津 岳士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50196474)
酒井 智彦 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教 (50456985)
石見 拓 京都大学, 環境安全保健機構, 教授 (60437291)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 口頭指導 / 通信指令 / 院外心停止 / プレホスピタル / OHCA |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦において、心原性院外心停止症例の 1 ヶ月後の社会復帰率は、10 年前に比べると 2.4 倍に増加したとはいえ、依然として 8%に満たない。次なる救急システムの改善は、最初の 119 番通報から救急隊到着までの時間をい かに有効に利用するか、すなわち救急システムにおける通信指令の口頭指導の質の向上をいかに図るかにかかっている。本研究においては、口頭指導の質の向上のために、①通信指令の客観的評価のために音声通信記録を聴取 したデータを元にレジストリを構築し、②指令員へのトレーニングの教育プログラムの開発と、 ③それらの教育を含めた救急通信指令システムの質改善の試みの効果の検証を目的とする。研究1年目となる平成29年度には、音声データを元にしたレジストリの構築を行い、実際にデータの収集を開始し、さらにすでに行われている指令員へのトレーニングの教育コースに参加し、その問題点を解析した。 研究はおおむね順調に進んでおり、データレジストリは実際に指令室への入所の許可を得た。指令室は個人情報の塊のような場所であるため、協力施設としての市自治体と大阪大学とが協定を結ぶことにより入所が可能となった。あらかじめ指令室にリストアップしてもらった心停止にかかわる音声情報を、実際に聞き取りながら、その時間関係、内容などを所定の登録用紙に記録した。さらに、研究協力消防の指令室へ、メディカルコントロールの枠組みで、指令員教育ワーキンググループに認定してもらうことで、より地域メディカルコントロールと歩調を合わせながら、教育プログラムを改善していく立場で研究の成果を検証しうることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1年目となる平成29年度において、研究代表者ならびに研究協力者は、1回のミーティングを行い、レジストリを行うべき項目についての再検討を行った。その結果、収拾する手間とデータとしての価値とのバランスを考え、feasibility のあるレジストリーフォーマットを確定することができた。さらには、スプレッドシートには展開できないような個別の事項については、後から解析できるような自由記載を行うこととし、リアルワールドデータとして価値ある成果が得られるような工夫をした。現在、順調にデータを収集して、解析に耐えうる症例数を蓄積しているところである。また、教育プログラムについては、以前より研究協力施設で行っていた指令員の訓練に、立案の段階より参加した。今までは、シナリオやムラージュを重視した訓練であったが、今回はシナリオをできるだけシンプルなものとした。さらに、同じシナリオを4市の指令員に4回行い、それをビデオ撮影したうえで、当事者と聴衆らと振り返ることで、それぞれの工夫と問題点を明らかにすることで、システム改善につなげる試みを行った。そもそも他の市の指令員はもとより、同一指令室内でも他の指令員がどのような指令や口頭指導を行っているかは実は全く見聞きすることがないということが明らかとなった。このため、他の指令員の活動を見聞きすること自体が良い機会となり、問題点が抽出され、システム改善につながるということが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、もっぱら2016年までのデータの蓄積を進めているところである。1例を収集する時間が、想定範囲よりも大幅にかかっていることより、収集したデータを後からまとめて解析するのではなく、すぐに解析に耐えうるような収集方法でデータ蓄積を行うように試みることとする。元来、119番通報の中には、不要不急の通報も少なからず含まれるため、心停止につながる通報の頻度は、決して多いとは言えない。これらの中からデータを集め、リサーチクエスチョンに耐えうるような症例数を満たすように推進していく。また、老健施設などからの通報や、頼まれ通報など、指令員の努力では如何ともしがたい症例について、どのように解析を行うかも検討していきたいと考える。プレリミナリーのデータを元に、データを学会発表し、論文化につながるようなディスカッションの機会を得る予定である。さらに、これらの症例を通して、口頭指導の訓練につながるようなノウハウを得ることができれば、口頭指導の訓練のプログラムを改善して、より良いシステム改善につなげるような試みを行う予定である。
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Causes of Carryover |
近年、国際学会に抄録を登録するだけで費用が発生しており、また英語論文も投稿するだけで費用がかかるようになってきたが、当初の予算建てではその経費を計上していなかったため、そちらに有効利用させていただく予定である。そのほか、学会参加費用、国内外の学会渡航費、口頭指導データ解析のためのPCや消耗品などの予定通り大切に有効利用させていただく予定である。
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