Outline of Annual Research Achievements |
今回, 転移性頭頸部癌と前立腺神経内分泌癌(NET)における細胞外小胞(EV)の重要性と標的性を検討した. まずNET細胞株(PC-3)のEV(10-50ug/ml)が,前立腺上皮細胞の上皮間葉転換(EMT)を誘導したたため,癌促進性EVに着目した. 高感度質量分析法でPC-3-EVから600蛋白質種以上が検出され,ストレス応答蛋白質HSP90が上位5%に含まれていた.細胞ストレス応答性に転写因子MZF1とHSF1が活性化され,ターゲットであるマルチキナーゼシャペロンCDC37とHSP90が誘導され,HSP90高発現EVが分泌されるという新経路を解明した. siRNAでCDC37を標的とするとCD9エクソソーム分泌を顕著に抑制できた.またsiRNAでCDC37やHSP90を標的とするとEMTが抑制できた.CDC37,HSP90α,HSP90β夫々のsiRNAは代償性に相互に発現誘導するという"もぐら叩き現象"を誘発したため,癌細胞の合成致死を狙ったトリプルノックダウン(KD)法を確立して用いると,マウス腫瘍移植モデルにおけるNET腫瘍形成を著しく抑制できた. 一方,頭頸部癌では,転移症例(ステージIV)臨床検体および高転移性細胞株(HSC-3-M3)において対照群と比べてHSP90が高発現していた.HSC-3-M3細胞のEVはHSP90α/β,エクソソームマーカー(CD9,CD63),癌幹細胞マーカーEpCAMを高発現し,癌細胞の遊走,浸潤,スフェロイド形成を促進した.上記トリプルKD法で,癌EVの癌促進機能(上皮細胞のEMT,癌細胞の遊走,浸潤,スフェロイド形成,マクロファージM2極性化,EVの分子送達性)のいずれをも抑制できた. 以上より, 転移性頭頸部癌と前立腺癌NETにおけるEV誘発性癌進展機構が理解でき,CDC37/HSP90α/β三重標的の有効性が証明された.
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