Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,転移性頭頸部癌と転移性大腸癌を対象とし,癌オルガノイド(Tumoroid,スフェロイド)を基盤とした薬剤評価システム構築および腫瘍微小環境の鍵を握る腫瘍随伴マクロファージ(TAM)を検討した. 癌オルガノイドは,中心から表層へと立体的レイヤー構造をとり,中心部は増大に伴い低酸素となった後,壊死が起こる.一方,表層付近ではKi67陽性細胞が増殖する.高凝集性転移性大腸癌細胞LuM1オルガノイドは,二次元培養細胞と比べて,細胞外小胞(EV)高産生であり,エクソソームだけでなく直径200nm~500nmの大オンコソームを分泌した.したがって,癌オルガノイドは「細胞外小胞性薬剤耐性」研究にも有用であることが判明した. 同オルガノイドは,薬剤排出ポンプABCG2を高発現し,抗癌剤低感受性であった.シスプラチン耐性どころか,シスプラチンやイマチニブによって癌オルガノイド形成が促進された.5フルオロウラシル(5-FU)は,癌オルガノイドを縮小したものの,MMP9発現が亢進したため,5-FU耐性細胞は,転移性を維持すると考えられた.同オルガノイドは,転移性マーカー(MMP3/9,EGFR,インテグリン),癌幹細胞マーカー(Notchリガンド,オンコスタチンM受容体,ポドプラニン,STAT3/1/5,EpCAM,Muc1,ALDH1),多能性幹細胞マーカー(Sox4,Sox7,N-Myc,GATA3,Nanog,Oct4)を高発現した. 腫瘍随伴マクロファージ(TAM)は,転移性頭頸部癌(舌癌)患者の臨床検体では,腫瘍内部へと浸潤したTAMが検出され,HSP90β高陽性であった.マクロファージは,他の細胞種(単球,線維芽細胞,癌細胞自身)と比べて,エクソソーム分子取込み効率が高い.実際に,転移性口腔癌細胞由来HSP90陽性エクソソームをマクロファージが取込んでM2型TAMに分極した.
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