2018 Fiscal Year Research-status Report
口臭抑制と歯周病減弱能を備えた、新たな硫化物吸着セラミックス多孔体の開発
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17K11722
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
堀田 正人 朝日大学, 歯学部, 教授 (10157042)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横川 善之 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (20358310)
川木 晴美 朝日大学, 歯学部, 准教授 (70513670)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 亜鉛置換型ハイドロタルサイト / 硫化水素濃度 / 抗菌作用 / 吸着能 / 口臭抑制 / マウスガード / 亜鉛溶出量 / ヒト唾液 |
Outline of Annual Research Achievements |
MgをZnに置換したZnHDT(Zn-Al LDH)は口腔内に近い条件下において吸着能に優れたセラミックス多孔体である. 前年度,我々は偏性嫌気性菌の歯周病関連菌を用いて,供試菌培養下における硫化水素濃度をガスクロマトグラフで測定し,硫化水素産生量を抑制する効果と供試菌に対する増殖度からZnHDTに抗菌作用を有することを明らかにした. 今年度は,臨床応用に有用であるかどうか,マウスピース材料のEVAシートにZnHDTを40wt%含有させたマウスガードを作製し,口腔内に2時間装着し,ヒトの口臭抑制効果を示すかどうか臨床試験を行った結果,被験者13名中12名がマウスガード装着2時間後に硫化水素濃度が低下しており,マウスガード装着前後で有意差を認めた. また、ZnHDTとEVA樹脂シートにZnHDTを40wt%含有させたものからMilli-Q水とヒト唾液中に溶出するZnの溶出量を測定した. その結果、Milli-Q水とヒト唾液に浸漬すると経時的にZn溶出量は増加したが,Milli-Q水に比べてヒト唾液では著しく少なかった.さらに、ZnHDT粉末を40wt%添加したEVA樹脂シートをMilli-Q水とヒト唾液に浸漬した場合のZn溶出量はMilli-Q水とヒト唾液に浸漬してもZnHDT粉末に比べると非常に少なく,Milli-Q水では経時的に増加したが,ヒト唾液では浸漬1,3,6時間後で変化はなかった. 鉄,亜鉛元素をともに含む層状複水酸化物Zn-Fe LDHを新規に合成した.Zn-Al LDH(ZnHDT), Mg-Fe LDHと比較してやや吸着量が少ない結果となった.Zn-Fe LDHは層状複水酸化物特有の回折パターンを示すが, ピークはブロードで結晶性が低く、そのため、結晶性の高いZn-Al LDH、Mg-Fe LDHと比べて, 吸着性が劣った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況であるが、昨年度においてMgをZnに置換したZnHDTは口腔内に近い条件下において吸着能に優れたセラミックス多孔体であることをin vitroにおいて,偏性嫌気性菌の歯周病関連菌を用いて,供試菌培養下における硫化水素濃度をガスクロマトグラフで測定し,硫化水素産生量を抑制する効果と供試菌に対する増殖度からZnHDTに抗菌作用を有することを明らかにした.今年度は,臨床応用に有用であるかどうか,マウスピース材料のEVAシートにZnHDTを40wt%含有させたマウスガードを作製し,口腔内に2時間装着し,ヒトの口臭抑制効果を示すかどうかin vivo において臨床試験を行った結果,被験者13名中12名がマウスガード装着2時間後に硫化水素濃度が低下しており,マウスガード装着前後で有意差を認め,ZnHDTが有用であることを確認した. また, ZnHDTとEVA樹脂シートにZnHDTを40wt%含有させたものからMilli-Q水とヒト唾液中に溶出するZnの溶出量を測定した結果、Milli-Q水とヒト唾液に浸漬すると経時的にZn溶出量は増加したが,Milli-Q水に比べてヒト唾液では著しく少なかった.さらに、ZnHDT粉末を40wt%添加したEVA樹脂シートをMilli-Q水とヒト唾液に浸漬した場合のZn溶出量はMilli-Q水とヒト唾液に浸漬してもZnHDT粉末に比べると非常に少なかったが, 溶出していた. 鉄,亜鉛元素をともに含む層状複水酸化物Zn-Fe LDHを新規に合成したが、Zn-Al LDH (ZnHDT)、Mg-Fe LDHと比較してやや吸着量が少ない結果となり, Znと同様にFeに対する細胞応答を検討する計画であったが, ペンディングの状態である.現在, Znに対する細胞応答を詳細に検討中である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は,歯周病関連菌に対するZnの抗菌性についてZnの量との関係について詳細に検討することと Znに対する細胞応答を詳細に検討すことが必要であると考えている. しかし, ZnHDTの揮発性硫黄化合物に対する優れた吸着性, Zn溶出による抗菌性が明らかになったことから, 29年度, 30年度で得られた結果を31年度にはまとめて, 論文にすることを考えている. さらに, ZnHDTをEVAシートに混入して, マウスガードを作製し, ヒトの口臭抑制に効果があったことから, 臨床応用するためには企業との連携が必須であり, 共同研究できる企業との提携等も視野に入れ, ホームページ等で世界に発信する必要があると考えている.
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Causes of Carryover |
英国のサイエンス・インパクト社から出版されている雑誌のインパクトに日本の歯科保存学分野における研究プロジェクトを特集する特別版が発刊されることになり、本研究を記事で取り上げてくれることとなった。この出版物は印刷版とデジタル版で世界中の3万5000人の読者に向けて配布されるという。このオープンアクセスの出版物の記事掲載にはページ料金が発生するようで1ページあたり日本円で約8万5千円かかるという。3ページの記事になるため、約25万5千円がかかる計算になり、これを来年度の分担金10万円と合わせて支払うために、15万3千2百4円を持ち越すこととした。
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Research Products
(8 results)