2018 Fiscal Year Research-status Report
顎義歯の機能回復におけるインプラント支持の有用性に関する検討
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17K11769
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
宮前 真 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (10340150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 大輔 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (00367616)
尾澤 昌悟 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (50323720)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 顎義歯 / 口腔インプラント / 咀嚼能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:下顎欠損症例では,顎骨の切除により患側への偏位や顎堤,歯の喪失により可動する軟組織の欠損を伴い,深刻な咀嚼障害,嚥下障害,発音障害,審美障害が生じる.それらを要因として,下顎の顎補綴治療,特に顎骨の切除範囲が大きい症例や無歯顎症例においては,従来の顎義歯による対応が困難であり,インプラントを埋入し義歯の維持を得る方法が多く行われるようになってきた.このことより,下顎欠損患者に対するインプラント支持による顎義歯の有効性を検証することは重要である. 本研究では,系統的な文献検索を行って,下顎欠損患者にインプラント顎義歯製作後,機能評価を行った論文を抽出し,その効果と影響因子について比較検討した. 研究方法:顎顔面補綴診療ガイドライン2009年版に追加して文献検索を行うこととし,日本顎顔面補綴歯科学会診療ガイドライン作成委員会において作成したキーワードを日本医学図書館協会に提示し,検索式を用いてPubMedおよび医中誌Webから再度文献調査を行って吟味した. 結果および考察:検索の結果,PubMed 合計208論文,医中誌Web 合計13論文の,総計221論文が検索されたが,RCTやSRは検索されず,症例数1~164の臨床研究であった. 文献選択基準は,インプラント埋入およびそれに続く補綴処置後の機能検査を行った観察研究とし,28編が基準を満たしていた.それらを分析した結果,下顎欠損患者へのインプラント顎義歯は,従来の顎義歯に比べ維持安定に優れ,咬合や咀嚼機能の回復に有用であり,また,下顎再建後のインプラント顎義歯装着症例では良好な咀嚼機能の回復が期待できるが,残存舌の運動制限や口腔乾燥といった要因が咀嚼機能の回復を妨げることもあることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍や外傷などを起因として,広範囲な顎骨欠損を余儀なくされた場合,その後の患者のQOL 向上には顎義歯を装着することになるが,顎骨欠損となった場合,顎義歯の安定要素である支持・把持・維持を求めることが極めて困難となり,口腔機能が思うように改善できない場合も多々認められる.一方,現在歯科インプラント治療は臨床現場で数多く使用され,コンベンショナルな補綴装置における支台装置と比較し,そのメリットが基礎的かつ臨床的にも確認されている. しかし,顎義歯におけるインプラント治療の有効性を明らかにした報告は少ないことから,今回,それらを確認するために本研究を進行しているが,おおむね順調に進展していると考えている.ただし,インプラントを応用した顎義歯症例数が当初の計画に比較し,集積されないため,当初の計画以上の進展とは言えないのが現状である.そこで,文献検索からインプラント治療が顎義歯に有効か否かを分析した結果,概ね有効であると判断できるものの,エビデンスレベルは決して高くないことが確認され,本法におけるエビデンスの集積が重要であるものと考えられる.また,本実験結果はすでに総説として学術雑誌に投稿し掲載許可を受けている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にもあるように1顎義歯症例における咀嚼能力検査,2インプラント症例における咀嚼能力評価,3インプラント支持顎顔面補綴装置症例の咀嚼能力評価の継続を予定している. さらには,研究計画にあるように研究代表者は,一般社団法人日本顎顔面補綴学会のガイドライン作成委員会に属しており,現在,本課題内容と同様の新規のガ イドラインを作成しているが,その一環から文献調査をもとに総説を学術雑誌に投稿し,掲載許可を得ている.今後は,別のQ&AやCQを包括したガイドラインを纏め,学会を通じて社会に公表する予定である.
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Causes of Carryover |
前年度は,学会活動の一部でもあるが,顎骨欠損患者に対するインプラント治療の有効性を文献調査から確認することを目的として主に活動してきたが,その結果を纏めて学術雑誌に投稿することができた.その反面,被験者個々の咀嚼能力評価が想定していたよりも遂行できなかったことから,本年も引き続き咀嚼能力評価の継続を予定している.そこで,咬合力測定用感圧シートであるデンタルプレスケール(ジーシー 社)購入する必要があり,これの購入および申請時に提示した消耗品,あるいはこれからの研究に必要となる物品の購入に際して,次年度使用額と本年度の予算支給分を合わせて適切に使用する予定である.
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Research Products
(3 results)