2018 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病患者のインプラント周囲炎を見据えた先制歯科医療戦略の構築
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17K11818
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
梅田 誠 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (90193937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 洋一郎 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (60434792)
楠本 哲次 大阪歯科大学, 医療保健学部, 教授 (70186394)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 糖尿病 / グルコース / チタン / インプラント周囲炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はナノレベルでの表面改質を行うことで, 硬組織誘導能を付与したナノシート析出チタンが糖尿病患者のインプラント治療に有効ではないかと考え, 高血糖モデル培地を用いて, チタン平板上における硬組織形成能について評価を行った。ALP活性はグルコース濃度が上昇するにつれて抑制されていくが, OCN産生量とCa析出量はグルコース濃度が8.0mMの時に急激に減少し, その後はグルコース濃度の上昇とともに増加に転じる傾向にあった。またカルシウムとリン比はグルコース濃度が8.0 mMでは減少し,グルコース濃度の上昇とともに増加に転じることが明らかになった。 加熱ナノ表面処理を行うことで,表面粗さとぬれ性を獲得し不純物が除去でき細胞にとって良好な環境となり,ALP,OCN,Ca,Pともに上昇したと考えられる。寺田らは高グルコース環境では細胞内情報伝達が阻害されALP、OCN、Ca、Pが低下することが予想されると報告しており,またガルシアらはLPS存在下で形成される硬組織と同様な幼弱な硬組織が多量に形成されると報告している。本研究でも8.0mMのグルコース濃度でOCN、Ca、Pが大きく変化しており、この時点で何かのスイッチがはいったのではないかと示唆される。 Tzaphlidouらは骨粗鬆症の治療とモニタリングにおいて高いCa/P比は病状進行の重要な基準であると報告しており,Ca/P比が高くなると骨質の低下が疑われる。リンは,リン酸エステルをALPが無機りんとアルコールに分解することで生じるが,高グルコース状態ではALP活性が低下し,Pの量が低下する。その結果としてCa/P比が高くなり、骨粗鬆症と同様な脆弱な骨が形成されることになると示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細菌感染によるインプラント周囲炎惹起モデルについては,現状のところ評価はできていない。平成31年度に行う動物実験による臨床模擬試験と並行して行う予定である。炎症惹起モデルの策定には更なる条件の設定が必要と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これらの結果から, グルコース濃度はチタン表面上の骨量と骨質に大きく関与しており, 高グルコース状態であっても, ナノシート析出チタンを用いることで, 通常グルコース濃度と同等の骨質と骨量を獲得できる可能性が明らかになった。したがって, このナノシート析出処理を施したインプラント体を適切に調製し使用することによって, 糖尿病患者のインプラント治療におけるオッセオインテグレーションの獲得がより堅固なものとなり, 糖尿病患者におけるインプラント治療の適応範囲が拡大されていくのではないかと考えられる。しかし, ナノシート析出チタンの詳細な作用機序の検討やイヌなどの大型動物による臨床モデル試験による検証が必須であり, 今後の臨床応用に向けての課題として, 検討していく必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
43600円と少額ではあるが,次年度に繰り越すことになったのは実験に使用した消耗品費に多少の予算との差異が生じたからだと考えられる。次年度の動物実験に生じる費用を充当する予定である。
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