2017 Fiscal Year Research-status Report
癌の新生血管を正常化させるサイトカインCXCL14の臨床的意義
Project/Area Number |
17K11860
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
生駒 丈晴 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 助教 (10638290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 優 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (00162024)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | CXCL14 / 血管新生抑制 / サイトカイン / VEGF |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室では、2006年にサイトカインCXCL14が強力な癌抑制遺伝子であることを初めて明らかにした。以降現在に至るまでCXCL14の抗腫瘍効果メカニズムの解明について研究を続けている。近年、当研究室以外でもCXCL14の強力な癌抑制作用の解明が精力的に進んでおり、特にサイトカイン同士の結合について研究が盛んになっている。Thomas D. ShellenbergerraらはVEGFをはじめとした血管新生因子に対してCXCL14が抑制的に働くことを見出したが、その詳細については報告されていなかった。 癌の血管新生メカニズムは、癌細胞自身が栄養不足を認識すると血管新生因子を放出することで周囲に存在する血管内皮細胞のみが異常増殖する。結果として相対的に血管内皮細胞を取り巻く血管周皮細胞が少なくなり、幼弱な新生血管で癌組織が発育することとなる。幼弱な新生血管は都合よくできており、血管周皮細胞が少ないため、物質透過性が亢進し組織間圧が高まる。結果として酸素や糖などの栄養分は癌組織に到達するが、抗がん剤は到達しにくい状況を作り出し、我々臨床家を悩ませることとなる。 血管新生抑制に着目した癌治療の理想は血管内皮細の増殖能のみを減弱させ新生血管を選択的に 退縮させること、すなわち癌組織内の血管を正常化させることである。 そこで我々はVEGFのみならず複数の血管新生因子に非特異的に結合するCXCL14の血管新生抑制効果に着目してそのメカニズムを解明することを目的とした。当研究室ではセツキシマブが癌組織内で癌抑制遺伝子CXCL14の発現を上昇させることを明らかにしている。癌の新生血管を正常化させることは抗がん剤の癌組織への移行性に重要であり、従来の抗がん剤とセツキシマブの併用療法の有用性証明する手掛かりになると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
我々はこれまでの研究において癌抑制性サイトカインCXCL14が発現しているHSC-3細胞(ヒト舌由来扁平上皮細胞株)を使用している。今回CXCL14の作用を確認するために、①HSC-3細胞、②CXCL14 ノックアウト HSC-3細胞、それぞれの培養上清を使用し、HUVEC(ヒト血管内皮細胞)に作用させた際の遺伝子発現変動についてマイクロアレイ解析を行う予定であった。 通常HSC-3細胞はDMEM培地を使用するが、HUVECと共培養するにあたりHSC-3細胞およびCXCL14ノックアウトHSC-3細胞を血管内皮細胞用培地に適応させる必要があった。細胞の状態が安定するまでに時間を要したため、進捗状況としてはやや遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
HSC-3細胞とHUVECの共培養に関しては、現在問題なく培養は可能である。培養後、HUVECの遺伝子変動をマイクロアレイ解析を行い、本研究と関わる可能性がある遺伝子群を抽出する。最終的にはCXCL14 ノックアウト HSC-3細胞にCXCL14発現ベクターを導入し、遺伝子発現変化が逆の動きをするかどうかを検討する。遺伝子発現変動についてはデータマイニングを行い整理する。
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Causes of Carryover |
H29年度予定では、HSC-3細胞とHUVECと共培養するにあたりHSC-3細胞およびCXCL14ノックアウトHSC-3細胞を血管内皮細胞用培地に適応させる必要があった。細胞の状態が安定するまでに時間を要したため、進捗状況としてはやや遅れてしまった。マイクロアレイ解析を行う際に電気泳動を行い、簡易的に遺伝子発現について確認する予定であった。 機器としてゲル撮影装置を購入予定であったが、そこに至るまで研究が進まなかった。その結果機器の購入はしなかったので、使用額に差額が生じてしまった。 細胞培養は安定して行えるため、今後は早急に機器を購入予定である。
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