2017 Fiscal Year Research-status Report
歯胚移植を応用した歯根膜静的幹細胞の恒常性維持機構の解明
Project/Area Number |
17K11953
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大島 邦子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (80213693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 勇人 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70251824)
早崎 治明 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60238095)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歯胚移植 / 幹細胞 / 歯根膜 / GFP / TetOP-H2B-GFP / BrdU |
Outline of Annual Research Achievements |
組織の修復・再生には組織幹細胞が大きな役割を担うことが知られているが、移植歯の生着の鍵を握る歯根膜幹細胞の動態についてはいまだ不明である。今回、歯胚移植後のドナー・レシピエント相互作用における歯根膜幹細胞の動態を検証し、その維持・分化機構の解明を目的とした。 胎生期15~17日(E15-17)に母獣の腹腔内にBrdUを投与し(胎生期ラベリング法)、非対称分裂をする幹細胞/前駆細胞をラベルし(ラベル細胞)、深麻酔下で生後1~2日齢のラベルB6マウス下顎第一臼歯の歯胚を、歯根形成期の生後2週齢の非ラベルB6マウス上顎第一臼歯部抜歯窩へと移植した。3日~3週間後にアルデヒド系固定液で灌流固定し、μCT解析、EDTA脱灰後、パラフィン切片を作製し、抗BrdU、抗Gli1、抗ペリオスチン抗体を用いた免疫染色を行い光顕で観察した。さらに、GFPトランスジェニックマウスをドナーまたはホストとした歯胚移植後の治癒過程と、TetOP-H2B-GFPマウス(E14.5にドキシサイクリン投与)における歯周組織発生過程をGFP免疫組織化学により検索した。 胎生期ラベリング法では生後2週までに歯根膜ラベル細胞は消失したが、TetOP-H2B-GFPマウスでは、歯根膜にラベル細胞が維持されており、Gli1発現と重なっていた。移植歯胚は術後2週には萌出を完了し、正常な数の咬頭が形成され、歯根形成も正常に進行した。GFPマウスを用いた歯胚移植実験により、マラッセの上皮遺残を含むセメント質寄りの歯根膜細胞と接合上皮はドナー由来、歯槽骨寄りの歯根膜細胞がドナーとホスト双方に由来することが明らかになった。以上より、歯根膜幹細胞と思われるラベル細胞は胎生15~17日に増殖しない細胞群であることが示唆された。今後はTetOP-H2B-GFPマウスを用いた歯胚移植実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定した計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)TetOP-H2B-GFPマウスを用いた歯胚移植実験 胎生14日にDoxを投与したTetOP-H2B-GFPマウスと野生型マウスをそれぞれドナーまたはレシピエントとして今年度と同じ手法で歯胚移植を行う。歯根膜の形成過程とドナー・レシピエント双方の歯根膜幹細胞の動態、幹細胞とShhの関係性などを経時的網羅的に検索するため、GFP、歯根膜マーカー(ペリオスチン)、Gli1、Shh、Patched1(Shhの受容体)、細胞増殖活性マーカー(Ki67)に対する免疫組織化学を行う。さらに、アポトーシス染色(TUNEL法)、in situハイブリダイゼーション(ISH)法またはRT-PCR法にてGli1、Shh、Patch1、細胞増殖マーカー(CyclinD1)、アポトーシスマーカー(Caspase3)遺伝子発現を解析する。 (2) TetOP-H2B-GFPマウス(近交系B6マウス)とクローズドコロニーICR野生型マウス間で歯胚他家移植 (1)と同様にDoxを投与したTetOP-H2B-GFPマウスとICR野生型マウス間で歯胚移植を行う。近交系であるB6マウス間の歯胚移植では免疫拒絶反応は一切起こらないのに対し、ICRマウスでは約半数で免疫拒絶反応が起こり、歯髄組織が消失するが、歯周組織は綺麗に形成されることから、少なくとも歯周組織の細胞は全てレシピエント細胞に置き換わることが示唆されている。そこで、今回、臨床における他家移植を想定し、意図的に拒絶反応を惹起する実験系として本実験を行う。術後1日から2週間後にマウスを固定し、(1)と同様に試料を作製し、マーカーを用いて解析する。拒絶反応からの治癒過程を明らかにすることにより、歯周組織の形成・修復・恒常性維持機構を解明し、臨床における他家移植の可能性について検討する。
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Causes of Carryover |
年度末に購入した試薬類の精算が次年度精算になったこと、学会発表予定が日程的に学内業務と重なり中止となったこと、B6およびGFPマウスが自家繁殖により購入が必要なかったことなどから今年度の使用額が抑えられているが、次年度にTetOP-H2B-GFPマウスが多数必要であること、研究打ち合わせの旅費が必要であることから、次年度に合わせて使用予定である。
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[Journal Article] Isolation and characterization of lymphoid enhancer factor-1-positive deciduous dental pulp stem-like cells after transfection with a piggyBac vector containing LEF1 promoter-driven selection markers2017
Author(s)
Murakami T, Saitoh I, Sato M, Inada E, Soda M, Oda M, Domon H, Iwase Y, Sawami T, Matsueda K, Terao Y, Ohshima H, Noguchi H, Hayasaki H
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Journal Title
Arch Oral Biol
Volume: 81
Pages: 110-120
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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